- 著者
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吉武 由彩
- 出版者
- 福岡県立大学人間社会学部
- 雑誌
- 福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.1-18, 2018-02
本稿では、リチャード・ティトマス(Richard Titmuss)の『贈与関係論』(_e Gift Relationship: from Human Blood to Social Policy)の論点を改めて確認し、その今日的意義を検討する。特にティトマスの『贈与関係論』における主要命題である「献血による社会的連帯の形成」という命題は、十分に検討されないまま今日に至っていると考えられる。そこで、この命題を取り上げ、ティトマスがどのようにして献血が社会的連帯の形成につながると考えていたのかを検討する。命題を再検討したところ、制度設計、互酬性の想定、コミュニティ意識という3つの観点から、ティトマスが社会的連帯の形成を考えていたことがわかる。さらに、ティトマス以後の研究の動向として、献血をめぐる社会学的研究は多くはないが、社会的連帯の不安定化という現代社会の状況を考えると、社会的連帯の形成に関する研究が必要であると考えられる。