著者
山﨑 めぐみ 住友 雄資
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.55-69, 2018-02

本総説論文は、長期入院の精神障害者に対する退院支援に関する文献レビューを通して、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援に関する研究課題を提示することである。文献レビューの結果、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援研究は少なく、しかも精神障害者との関係づくりや退院の意欲喚起に限定されていることが明らかになった。このことから長期入院者の退院を阻む各要因を精神保健福祉士がどのように把握し、その総合的な把握から要因を取り除いていく研究、退院支援の内容やプロセス等を丹念に質的に探究しそれを記述していくという質的研究、長期入院患者と家族の関係を再構築するための具体的な方法を明らかにする家族に関する研究、具体的な社会資源の活用・開発を推進していく研究、精神保健福祉士が地域住民等にどのような実践を積み重ねていけばよいのかという研究、という5点の研究課題を提示した。
著者
寺島 正博
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-16, 2015-02

本研究は全国の障害福祉サービス事業所で働く従事者を対象としたアンケートによる意識調査を行い、観察従事者が加害従事者による無意識の不適切行為を判断する傾向について個人属性と労働環境から明らかとし、間接手法を用いて無意識の不適切行為の防止を図ることを目的とした。回答は7,813名であり回収率は30.7%であった。結果については、①知的障害者の女性観察従事者はさまざまな状況下における無意識の不適切行為の判断が必要であること、②知的障害者の施設入所支援観察従事者は無意識の不適切行為を見極める能力が必要であること、③知的障害者の観察従事者は福祉系学校の卒業と福祉系国家資格の取得が必要であること、④知的障害者の観察従事者は従事者間の確認体制が必要であることを明らかとした。そして、無意識の不適切行為とは加害従事者だけではなく、観察従事者についても起こり得るため、本研究結果はすべての従事者に活かされることになる。
著者
細井 勇
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-20, 2017-02-28

日本の戦後社会福祉理論は、社会福祉を社会政策との関係から説明する「補充論」に特徴があった。この場合の社会政策とは大河内一男のマルクス主義的な社会政策論であり、労働力の保全策、言い換えれば労働力の「商品化」政策であり、経済政策と同定される社会政策であった。それは正義や自由の問題を形而上学=非科学として排除するものであった。しかし、今日の社会福祉のテキストでは、「補充論」と併記して、エスピン・アンデルセンの福祉レジームとその指標としての「脱商品化」や、ロールズやセンによる自由の正義論が紹介されている。そこで本論文は、「商品化」論と「脱商品化」論の関係は如何に把握されるべきかを以下のように論じた。すなわち、正義と自由の概念との関係で社会福祉が論じられる背景を正義論の歴史的系譜として説明し(1章)、戦後日本の社会福祉理論形成において正義と自由が何故排除されたかを歴史的文脈から説明し(2章)、戦後日本の社会福祉展開において「脱商品化」論は如何に受容されてきたか、またされるべきかを論じた(3章)。
著者
細井 勇
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-20, 2017-02

日本の戦後社会福祉理論は、社会福祉を社会政策との関係から説明する「補充論」に特徴があった。この場合の社会政策とは大河内一男のマルクス主義的な社会政策論であり、労働力の保全策、言い換えれば労働力の「商品化」政策であり、経済政策と同定される社会政策であった。それは正義や自由の問題を形而上学=非科学として排除するものであった。しかし、今日の社会福祉のテキストでは、「補充論」と併記して、エスピン・アンデルセンの福祉レジームとその指標としての「脱商品化」や、ロールズやセンによる自由の正義論が紹介されている。そこで本論文は、「商品化」論と「脱商品化」論の関係は如何に把握されるべきかを以下のように論じた。すなわち、正義と自由の概念との関係で社会福祉が論じられる背景を正義論の歴史的系譜として説明し(1章)、戦後日本の社会福祉理論形成において正義と自由が何故排除されたかを歴史的文脈から説明し(2章)、戦後日本の社会福祉展開において「脱商品化」論は如何に受容されてきたか、またされるべきかを論じた(3章)。
著者
石崎 龍二
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.21-40, 2017-02-28

統計教育科目における学生の学習到達度を、記述統計・推測統計の知識、データ分析スキルに関する学生の自己評価、グループワーク報告書の課題別評価、毎回の授業評価等の観点から考察した。 自己評価の高群と低群についての比較検定から、記述統計・推測統計の知識の理解度について、記述統計に関する5項目、推測統計に関する7項目に有意水準1%で有意差が認められた。また、記述統計・推測統計のデータ分析スキルの習得度については、記述統計に関する2項目、推測統計に関する11項目に有意水準1%で有意差が認められた。さらに、記述統計・推測統計の知識の理解度、データ分析スキルの習得度について、自己評価(高群・低群)を外的基準、有意水準1%で有意差が認められた項目を説明アイテムとする数量化理論第Ⅱ類の分析を行った。記述統計・推測統計の活用力については、グループワーク報告書の課題別評価から学習到達度を考察した。
著者
井上 奈美子
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.97-110, 2018-09

本稿は、キャリア教育関連の先行研究を概観し、大学におけるキャリア教育のあり方について考察するものである。先行研究からは大枠で2つの視点からの研究があることが見て取れた。まず、スーパーらが示す心理学と職業選択理論を中心としたものであり、学生が職業社会へ移行する段階では、自己理解をしたうえでの主体的行動が必要であり、それは相互作用の場において何らかの役割があることが行動を促進するとされる。他方、シャインを代表とする人的資源の視点からは、職業社会では生涯を通して自律した精神を持つことが求められ、個人がキャリアを予測・計画する行為が肝要であるとしている。文献研究を通して見えてきたことは、スーパーの「役割を与えることによる職業観の醸成」を指摘した理論を援用した、学生のキャリア教育の検討の必要性と、ライフ・キャリアという広い視点でキャリアを捉えた教育プログラムの構築の必要性である。
著者
石崎 龍二 佐藤 繁美
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.71-86, 2020-02-29

統計演習科目における授業改善点を、記述統計・推測統計に関する知識、データ分析スキルについての学生の自己評価、レポート課題、グループワーク報告書の評価、eラーニング確認テスト結果等より考察した。 学生の自己評価において、記述統計・推測統計の専門用語を理解している割合が、受講前と比べて全23項目で上昇したものの、有意水準1%もしくは5%で有意に上昇したのは10項目であっ た。データ分析のスキルについては、受講前と比べて「Excelを使った統計処理」の項目別操作スキルの全16項目中15項目が有意水準1%もしくは5%で有意に上昇した。 学生の自己評価、レポート課題の評価、グループワーク報告書の評価、eラーニング確認テスト結果等から、記述統計から推測統計への導入教育、テキストにおける推測統計の解説内容の改善の必要性、レポート課題、グループワーク、eラーニング確認テスト等の改善点を抽出した。
著者
奥村 賢一
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.175-189, 2018-02-28

市町村に寄せられる児童虐待の相談件数で最も多いネグレクトにおいて、その被虐待児の年齢構成割合で最も多くを占めているのは小学生である。しかし、ネグレクト環境(疑いを含む)で生活する児童に対し適切な理解ならびに支援が小学校で行われているかは定かではない。そこで本研究では、A市内の公立小学校に勤務する教員を対象にアンケート調査を行い、ネグレクト児童および家族の実態、さらに小学校で行われているネグレクト児童の支援の実施状況等について調査を行った。 その結果、特に学級担任と管理職・その他の教員間において認識や対応に相違がある項目が複数存在することが明らかとなった。そのうえで、①ネグレクト児童のスクリーニングとアウトリーチの併用、②ケース会議を活用したケースマネジメント、③校外協働に向けたネットワーキングにおいてスクールソーシャルワーカーの役割を強化していくことがネグレクト児童の支援において重要であることを示した。
著者
吉武 由彩
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.1-18, 2018-02

本稿では、リチャード・ティトマス(Richard Titmuss)の『贈与関係論』(_e Gift Relationship: from Human Blood to Social Policy)の論点を改めて確認し、その今日的意義を検討する。特にティトマスの『贈与関係論』における主要命題である「献血による社会的連帯の形成」という命題は、十分に検討されないまま今日に至っていると考えられる。そこで、この命題を取り上げ、ティトマスがどのようにして献血が社会的連帯の形成につながると考えていたのかを検討する。命題を再検討したところ、制度設計、互酬性の想定、コミュニティ意識という3つの観点から、ティトマスが社会的連帯の形成を考えていたことがわかる。さらに、ティトマス以後の研究の動向として、献血をめぐる社会学的研究は多くはないが、社会的連帯の不安定化という現代社会の状況を考えると、社会的連帯の形成に関する研究が必要であると考えられる。
著者
池田 孝博
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-12, 2014-09

近年、地域社会への貢献は、大学の大きな使命のひとつに位置づけられている。しかしながら、その活動について検証した文献は少ない。本研究の目的は、福岡県立大学の専門教育として行われている保育者養成教育と田川市立幼稚園における身体運動に関する指導・支援活動について検証することである。この連携活動に参加した学生と幼稚園の教員および園児の保護者を対象に調査を実施した。その結果、体力・運動能力測定、運動会の練習支援および本番のお手伝い、朝の運動遊びの連携活動は、学生の専門教育として十分な効果的をあげていることが確認された。また、幼稚園の教員による評価においても、学生の活動が子どもたちの保育活動に良い影響を与えていることが確認された。さらに、保護者の評価では、連携活動に対して高い認知度が認められ、その評価も高いことが確認された。よって、これらの活動は、大学から地域社会への貢献だけでなく、大学教育に地域が貢献している「双方向モデル」の事例になると考えられる。
著者
鷲野 彰子
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.55-71, 2015-09

近年、20世紀初期の録音が数多く販売されているが、その中には自動演奏ピアノを再生したものも含まれる。自動演奏ピアノを再生した録音は雑音を多く含むアナログ録音と異なり、録音技術の発達した現代に実際に楽器を鳴らして録音するため、その音質の良さが最大の魅力といえるかもしれない。だが演奏分析をする者にとっては、自動演奏ピアノとそこに遺された記録は、それにも増して、大きな魅力を備えた存在といえる。それは、自動演奏ピアノの記録媒体であるピアノロールに遺された記録が、目で情報を捉えることのできるものであり、しかもそこに記録を遺した数々の演奏には、多くの著名な演奏家や作曲家自身によるものが含まれているためである。つまり、彼らの演奏を私たちは耳だけでなく、目でも捉えることができる点において、他の資料と決定的に異った魅力を備えているといえる。 本論文は、ピアノロールから演奏を分析する試みの第一歩として行った、パデレフスキによるショパン《ワルツOp.34-1》の冒頭主題部分の演奏で、彼がどのようなリズムで「ワルツ」を演奏したのかを、ピアノロールから分析し、まとめたものである。そこからは、楽譜中には書かれていない/記載不可能なワルツのリズムの「演奏法」がおぼろげに見えてくる。