著者
岡本 雅享
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.11-31, 2009-01-08

筆者は拙稿「日本における民族の創造」(大阪経済法科大学『アジア太平洋レビュー』第5号、2008年9月)で、1880年代末の日本で「民族」という言葉・概念が生じてから、どのよう に民族が創造されてきたかを、大和民族(1888年初出)と出雲民族(1896年初出)を対比しながら検証した。本稿では民族の三要素(歴史・文化、言語、宗教)の中で、日本の中ではより単一だと思われがちな言語に焦点をあてて、単一・同質だといわれるものの内部から、その幻想を解体してみたいと思う。
著者
岡本 雅享
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.11-31, 2009-01-08

筆者は拙稿「日本における民族の創造」(大阪経済法科大学『アジア太平洋レビュー』第5号、2008年9月)で、1880年代末の日本で「民族」という言葉・概念が生じてから、どのよう に民族が創造されてきたかを、大和民族(1888年初出)と出雲民族(1896年初出)を対比しながら検証した。本稿では民族の三要素(歴史・文化、言語、宗教)の中で、日本の中ではより単一だと思われがちな言語に焦点をあてて、単一・同質だといわれるものの内部から、その幻想を解体してみたいと思う。
著者
山﨑 めぐみ 住友 雄資
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.55-69, 2018-02

本総説論文は、長期入院の精神障害者に対する退院支援に関する文献レビューを通して、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援に関する研究課題を提示することである。文献レビューの結果、精神科病院の精神保健福祉士が行う退院支援研究は少なく、しかも精神障害者との関係づくりや退院の意欲喚起に限定されていることが明らかになった。このことから長期入院者の退院を阻む各要因を精神保健福祉士がどのように把握し、その総合的な把握から要因を取り除いていく研究、退院支援の内容やプロセス等を丹念に質的に探究しそれを記述していくという質的研究、長期入院患者と家族の関係を再構築するための具体的な方法を明らかにする家族に関する研究、具体的な社会資源の活用・開発を推進していく研究、精神保健福祉士が地域住民等にどのような実践を積み重ねていけばよいのかという研究、という5点の研究課題を提示した。
著者
阪井 俊文 中村 晋介
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-31, 2018-09-30

本研究の目的は、青年期女性の恋愛観を測定するための尺度を作成することである。これまでにも、同様の試みは数多く行われているが、先行研究の問題点を指摘した上で、それを改善することで現代の青年期女性に適合する尺度項目を選定し、大学生と専門学校生を対象にして質問紙調査を実施し、1341名の回答を得た。因子分析の結果、「恋愛向上志向」「恋愛苦悩志向」「恋愛没入志向」「恋愛享楽志向」「恋愛実利志向」「友愛志向」の6因子が抽出され、統計的にその妥当性も確認された。また、いくつかの因子は専門学校生と大学生で結果が異なっており、これらの恋愛観の個人差に、階層などの社会的要因も影響していることが示唆された。今後は、この尺度を活用することで、心理的要因と社会的要因の双方について、個人の恋愛観に及ぼしている影響が解明されることが期待される。
著者
岡本 雅享
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.73-99, 2012-01-08

筆者は拙稿「アテルイ復権運動の軌跡とエミシ意識の覚醒」(『アジア太平洋レビュー』 第8号)で、1980年代後半から2000年代にかけて東北で生じたアテルイ復権運動を検証したが、 本稿では、ほぼ同じ時期(1990年代前半)、南九州(熊本県球磨郡免田町)で起きたクマソ復権運動の軌跡を辿り、それが意味したものを検証し、南九州人のアイデンティティについて考察する。
著者
寺島 正博
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-16, 2015-02

本研究は全国の障害福祉サービス事業所で働く従事者を対象としたアンケートによる意識調査を行い、観察従事者が加害従事者による無意識の不適切行為を判断する傾向について個人属性と労働環境から明らかとし、間接手法を用いて無意識の不適切行為の防止を図ることを目的とした。回答は7,813名であり回収率は30.7%であった。結果については、①知的障害者の女性観察従事者はさまざまな状況下における無意識の不適切行為の判断が必要であること、②知的障害者の施設入所支援観察従事者は無意識の不適切行為を見極める能力が必要であること、③知的障害者の観察従事者は福祉系学校の卒業と福祉系国家資格の取得が必要であること、④知的障害者の観察従事者は従事者間の確認体制が必要であることを明らかとした。そして、無意識の不適切行為とは加害従事者だけではなく、観察従事者についても起こり得るため、本研究結果はすべての従事者に活かされることになる。
著者
細井 勇
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-20, 2017-02-28

日本の戦後社会福祉理論は、社会福祉を社会政策との関係から説明する「補充論」に特徴があった。この場合の社会政策とは大河内一男のマルクス主義的な社会政策論であり、労働力の保全策、言い換えれば労働力の「商品化」政策であり、経済政策と同定される社会政策であった。それは正義や自由の問題を形而上学=非科学として排除するものであった。しかし、今日の社会福祉のテキストでは、「補充論」と併記して、エスピン・アンデルセンの福祉レジームとその指標としての「脱商品化」や、ロールズやセンによる自由の正義論が紹介されている。そこで本論文は、「商品化」論と「脱商品化」論の関係は如何に把握されるべきかを以下のように論じた。すなわち、正義と自由の概念との関係で社会福祉が論じられる背景を正義論の歴史的系譜として説明し(1章)、戦後日本の社会福祉理論形成において正義と自由が何故排除されたかを歴史的文脈から説明し(2章)、戦後日本の社会福祉展開において「脱商品化」論は如何に受容されてきたか、またされるべきかを論じた(3章)。
著者
細井 勇
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.1-20, 2017-02

日本の戦後社会福祉理論は、社会福祉を社会政策との関係から説明する「補充論」に特徴があった。この場合の社会政策とは大河内一男のマルクス主義的な社会政策論であり、労働力の保全策、言い換えれば労働力の「商品化」政策であり、経済政策と同定される社会政策であった。それは正義や自由の問題を形而上学=非科学として排除するものであった。しかし、今日の社会福祉のテキストでは、「補充論」と併記して、エスピン・アンデルセンの福祉レジームとその指標としての「脱商品化」や、ロールズやセンによる自由の正義論が紹介されている。そこで本論文は、「商品化」論と「脱商品化」論の関係は如何に把握されるべきかを以下のように論じた。すなわち、正義と自由の概念との関係で社会福祉が論じられる背景を正義論の歴史的系譜として説明し(1章)、戦後日本の社会福祉理論形成において正義と自由が何故排除されたかを歴史的文脈から説明し(2章)、戦後日本の社会福祉展開において「脱商品化」論は如何に受容されてきたか、またされるべきかを論じた(3章)。
著者
石崎 龍二
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.21-40, 2017-02-28

統計教育科目における学生の学習到達度を、記述統計・推測統計の知識、データ分析スキルに関する学生の自己評価、グループワーク報告書の課題別評価、毎回の授業評価等の観点から考察した。 自己評価の高群と低群についての比較検定から、記述統計・推測統計の知識の理解度について、記述統計に関する5項目、推測統計に関する7項目に有意水準1%で有意差が認められた。また、記述統計・推測統計のデータ分析スキルの習得度については、記述統計に関する2項目、推測統計に関する11項目に有意水準1%で有意差が認められた。さらに、記述統計・推測統計の知識の理解度、データ分析スキルの習得度について、自己評価(高群・低群)を外的基準、有意水準1%で有意差が認められた項目を説明アイテムとする数量化理論第Ⅱ類の分析を行った。記述統計・推測統計の活用力については、グループワーク報告書の課題別評価から学習到達度を考察した。
著者
井上 奈美子
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.97-110, 2018-09

本稿は、キャリア教育関連の先行研究を概観し、大学におけるキャリア教育のあり方について考察するものである。先行研究からは大枠で2つの視点からの研究があることが見て取れた。まず、スーパーらが示す心理学と職業選択理論を中心としたものであり、学生が職業社会へ移行する段階では、自己理解をしたうえでの主体的行動が必要であり、それは相互作用の場において何らかの役割があることが行動を促進するとされる。他方、シャインを代表とする人的資源の視点からは、職業社会では生涯を通して自律した精神を持つことが求められ、個人がキャリアを予測・計画する行為が肝要であるとしている。文献研究を通して見えてきたことは、スーパーの「役割を与えることによる職業観の醸成」を指摘した理論を援用した、学生のキャリア教育の検討の必要性と、ライフ・キャリアという広い視点でキャリアを捉えた教育プログラムの構築の必要性である。
著者
石崎 龍二 佐藤 繁美
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.71-86, 2020-02-29

統計演習科目における授業改善点を、記述統計・推測統計に関する知識、データ分析スキルについての学生の自己評価、レポート課題、グループワーク報告書の評価、eラーニング確認テスト結果等より考察した。 学生の自己評価において、記述統計・推測統計の専門用語を理解している割合が、受講前と比べて全23項目で上昇したものの、有意水準1%もしくは5%で有意に上昇したのは10項目であっ た。データ分析のスキルについては、受講前と比べて「Excelを使った統計処理」の項目別操作スキルの全16項目中15項目が有意水準1%もしくは5%で有意に上昇した。 学生の自己評価、レポート課題の評価、グループワーク報告書の評価、eラーニング確認テスト結果等から、記述統計から推測統計への導入教育、テキストにおける推測統計の解説内容の改善の必要性、レポート課題、グループワーク、eラーニング確認テスト等の改善点を抽出した。
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
奥村 賢一
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.175-189, 2018-02-28

市町村に寄せられる児童虐待の相談件数で最も多いネグレクトにおいて、その被虐待児の年齢構成割合で最も多くを占めているのは小学生である。しかし、ネグレクト環境(疑いを含む)で生活する児童に対し適切な理解ならびに支援が小学校で行われているかは定かではない。そこで本研究では、A市内の公立小学校に勤務する教員を対象にアンケート調査を行い、ネグレクト児童および家族の実態、さらに小学校で行われているネグレクト児童の支援の実施状況等について調査を行った。 その結果、特に学級担任と管理職・その他の教員間において認識や対応に相違がある項目が複数存在することが明らかとなった。そのうえで、①ネグレクト児童のスクリーニングとアウトリーチの併用、②ケース会議を活用したケースマネジメント、③校外協働に向けたネットワーキングにおいてスクールソーシャルワーカーの役割を強化していくことがネグレクト児童の支援において重要であることを示した。
著者
吉武 由彩
出版者
福岡県立大学人間社会学部
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.1-18, 2018-02

本稿では、リチャード・ティトマス(Richard Titmuss)の『贈与関係論』(_e Gift Relationship: from Human Blood to Social Policy)の論点を改めて確認し、その今日的意義を検討する。特にティトマスの『贈与関係論』における主要命題である「献血による社会的連帯の形成」という命題は、十分に検討されないまま今日に至っていると考えられる。そこで、この命題を取り上げ、ティトマスがどのようにして献血が社会的連帯の形成につながると考えていたのかを検討する。命題を再検討したところ、制度設計、互酬性の想定、コミュニティ意識という3つの観点から、ティトマスが社会的連帯の形成を考えていたことがわかる。さらに、ティトマス以後の研究の動向として、献血をめぐる社会学的研究は多くはないが、社会的連帯の不安定化という現代社会の状況を考えると、社会的連帯の形成に関する研究が必要であると考えられる。
著者
藤山 正二郎
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.1-13, 2012-01-08

先に私は「野生の思考としての伝統医学」という論文を書いた。その要旨は、漢方などの伝統医学は近代医学とは異なる科学的認識で成立している、いわばレヴィ=ストロースの言葉の「具体の科学」として伝統医学を展開することであった。さらに本論ではレヴィ=ストロースの『野生の思考』の「感性的表現による感覚界の思弁的な組織化と活用をもとにしてなしえた自然についての発見」を基本として、第1章の「具体の科学」のなかの「ブリコラージュ」 「神話的思索」の概念を消化して、漢方、中医学、ウイグル医学という私が多少とも関わった伝統医学の理解に応用したいと考えている。 「具体の科学」とは遅れている科学ではない。近代医学は部分的に伝統的な処方薬などの分析を行い、伝統医学の効能を認めつつある。分析とは近代の科学的方法の一つである。それによって、この二つの科学のコミュニケーションが部分的には可能であろう。しかし、その背後にある身体観、自然観などを理解可能なものにしないと、伝統医学は科学ではなく、哲学、思想にとどまってしまう。そうしないためにも、この二つの科学的認識を対照させながら、相互にその認識の特徴を明らかにしたい。 ブリコラージュとは、 「ありあわせの道具材料を用いて自分の手でものを作ること」である。 「器用仕事」とか訳されているがいま一つしっくりこない。ブリコラージュでは資材の世界は閉じている。すなわち、そのときそのとき限られた道具と材料の集合で何とかするというのがここでのゲームの規則である。身体はそれを包む環境とのバランスのとれた相互作用のなかにある。いわば閉じた世界である。それを対象とする医療はブリコラージュ的であるべきであろう。環境の変化によって、新しい病気などは出現するが、基本的には身体は静態的均衡になかにある。具体の科学の知識の工作面を示すのがブリコラージュであるが、伝統医学は自然の「ありあわせ」の植物や動物などを薬として使用する。 近代医学は身体の概念を拡大していく。人間機械論から、臓器移植、再生医療など、身体を人間本来のものから絶えずはみ出してきた。さらに科学的概念を駆使して、合成された新薬を絶えず開発きた。このように近代医学は無限に拡大可能な科学的概念を使用する。 伝統医学は身体的記号(embodied symbol)を使う。脈状、舌の形状、色など言語化しにくい記号で判断する。陰陽五行説も基本は身体的メタファーである。患者を前にして、これらのシンボルをブリコラージュ的に組合せ、構造的な処方を出すのである。