著者
小林 正典
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.11, pp.23-42, 2018-03

建国当初、中国のガイドは、社会主義中国を代弁する政治的、外交的役割を担っていたが、改革開放後は旅行社との契約関係の下、その役割もビジネスの分野に傾斜していった。さらに中国人の渡航規制が緩和されるにつれ、旅行社とそこに所属するガイド及び添乗員の制度が確立し、ガイドと添乗員は中国の旅行遊覧事業を牽引する大きな役割を果たすようになった。ところが、ガイドと添乗員は制度的に独立した地位になく、現行制度上もその地位は旅行社との契約関係に従属する形でのみ保持しうるため、顧客獲得の競争激化に伴って、その賃金や報酬は徐々に削減されていった。その結果、悪質な手口で収入を得るガイドや添乗員が増加した。かかる問題に対し、中国政府は法整備によって旅行社、ガイド及び添乗員の活動を規制し、最近では行政改革の流れに呼応し、高度な情報処理技術を駆使した新たな監督管理制度を導入し始めている。リアルタイムで不正な行為をチェックできるようになると、悪質な業者は中国から駆逐されていくが、活動拠点は海外に移ることとなる。悪質な業者が流入する国や地域においては、これまで以上にトラブルを生じる可能性がある。問題を未然に防止するには、国際的に共通の取引約款やグローバルな監督管理のルールを整備し、第四次産業革命に向けて突き進む中国の監督管理システムと情報を共有しうるネットワークを構築するのが有効である。しかしながら、どの国や地域にとっても、中国の方式に組み込まれていくことには世論の反発が少なくないであろうから、グローバルな監督管理システムの構築は容易でないと考えられる。

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