- 著者
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扶瀬 絵梨奈
- 出版者
- 名古屋柳城短期大学幼児教育・保育研究会
- 雑誌
- 柳城こども学研究 = Ryujo Child Studies
- 巻号頁・発行日
- no.1, pp.71-79, 2018-07-20
本論文では、第5 次改訂である幼稚園教育要領(2017)の領域「表現」における内容の取扱いとして新たに加えられた「風の音や雨の音、身近にある草や花の形や色など自然の中にある音、形、色などに気付くようにすること」について、気付く(音をきく)という行為に着目し、自然音に意識を向けた指導の在り方について検討することを目的とした。様々な音を受容している現代の日常生活のなかで、自然音に気付く機会は学生にとって多くはなく、保育職を志す学生の「自然音」に対する記憶や意識についての基礎的知見を得るために音環境および音の記憶に関する調査を行った。学生は自然音に関する幼少期の記憶が確かにあり、風や雨の音に耳を澄ませた経験があることや、音楽が好きと答える学生ほど、音に音程やリズムをもつ自然音を心地よく感じる傾向があることが明らかとなった。今回は保育者養成短期大学の1 年次に在籍する学生を対象に調査を行ったが、教育のなかで「聴(聞)くこと」や「聞こえること」に対する意識が促進されるような教示を展開したのちに、音への好奇心や探究心がどう高まるのか、隣接する領域にも着目しながら研究を進めていきたい。