著者
青山 浩一郎
出版者
多摩大学経営情報学部
雑誌
経営・情報研究 多摩大学研究紀要 = Tama University Journal of Management and Information Sciences (ISSN:13429507)
巻号頁・発行日
no.7, pp.17-37, 2003-03-01

わが国が発行している国債の現状に関して、次のことを指摘できる。1)国債の発行残高は絶対額でも、相対的にも巨額である。2)いまの国債価格は、これ以上は上昇しにくい高い水準にある。3)国債の保有構造は異常である。資金余剰主体である家計の直接保有がすくない。今後、数年を展望して次のようなことを主張したい。1)国債の発行残高は、数年以内に600 兆円を超えるであろう。2)国債の価格は現在をピークとして、下落する可能性しかない。3)国債の保有構造は、ここ数年間では大きくはかわらない。こうしたなかで、国債問題を総合的に、冷静にかんがえることが重要である。そのためには、いま利用できる情報は乏しいし、事態はまいにち進行しているが、本稿での主張をつぎのように要約しておきたい。1)国債の発行残高が、巨額であることを認識したうえで、無用な誤解や混乱があるとすれば、それは払拭されなければならない。日本国債がデフオールトする、家計が国債の購入を強制される、郵便貯金がもどってこない、などの妄言は、政府の責任において打ち消さなければならない。これまでのところ、政府は巨額な債務者としての説明責任を、自覚しているとはおもえない。2)国債の価格は下落するが、正常な長期金利の上昇なら影響はそれほど大きくはない。民間銀行の国債保有期間は平均5年以下で、小幅な長期金利の上昇なら、国債価格の値下がり幅は大きくはない。また、正常な金利の上昇なら、同時におこる株価の上昇や、貸出し収益の改善などで吸収できる。問題は、インフレにともなう大幅な金利の上昇である。これは、国債価格の暴落をもたらす。インフレは回避すべきである。3)国債の保有構造を正常化させるよう、官民の尽力が必要である。公的機関が家計にかわって国債を保有している現在、運用の実態を開示すると同時に、このような現状の改革をすすめなければいけない。郵便貯金からの家計資金の解放が、民間金融機関とのバランスから不可欠である。家計がすすんで有価証券で金融資産を運用する国、これを早く実現させなければならない。いま、わが国で最大の課題である国債、この小論でとりあつかうには大きすぎるテーマではあるが、問題の理解に関して、ここにアプローチの視点を提示したつもりである。

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