著者
餅川 正雄
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 = HUE journal of humanities, social and natural sciences (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.53-75, 2018-12

本研究は,日本の養子縁組制度と法定相続の関係を考察することを目的としている。その理由は,養子縁組によって法定相続分は大きく変化することがあるからである。そこで,本研究では,第一に,なぜ養子制度があるのかを考察する。第二に「普通養子制度」と「特別養子制度」の目的とメリット・デメリットについて整理する。我が国の養子縁組制度の基礎的な内容について,特徴と問題点を明らかにする。第三に,代表的と考えられる養子縁組のケースとして次の4つの設例を基に法定相続分がどうなるのかを検討した。第1の設例として「孫養子」のケースを検討した。これは祖父が孫を養子とする場合であり,孫であると同時に子でもあるということになる。孫としての法定相続分と,子(養子)としての相続分の重複は認められることが分かった。第2の設例として,兄が弟を養子とする「兄弟間の養子縁組」のケースを検討した。この場合,兄が亡くなって相続が発生すると,弟には子としての立場と弟としての立場が併存することになる。この弟を養子にしたケースでは,弟は子(養子)としての立場から相続権を主張することができるのみとなることが分かった。第3の設例として,父親に実子と特別養子縁組の養子がいて,その二人が婚姻して子が生まれ,その後,養親である父親よりも先に養子が死亡したケースを検討した。実子と特別養子の間に子がいて,特別養子が死亡したので,配偶者である実子が2分の1,子は2分の1ということになる。第4の設例として,父親に実子と普通養子縁組の養子がいて,その二人が婚姻し,養子の実親と養親(X)が存命中に,養子が死亡したケースを検討した。この場合,配偶者である実子が3分の2,養親(X)が6分の1(=1/3×1/2),実親(Y)が6分の1(=1/3×1/2)となることが分かった。その理由は,養親関係と実親関係の間に差は生じないからであった。1.はじめに 1.1養子縁組制度の存在理由 1.2普通養子縁組と特別養子縁組 2.普通養子制度 2.1普通養子制度の利用目的 2.2普通養子縁組の要件 2.3養子縁組の形式的要件 2.4普通養子縁組の効果 2.4.1養子は嫡出子の身分を取得する 2.4.2養親が親権者となる 2.4.3相互に扶養義務を負う 2.4.4離縁後も養親と養子の婚姻は禁止される 2.5養子縁組のメリット 2.6相続税法上の養子数の限定 2.7養子縁組のデメリット 3.特別養子縁組制度 3.1特別養子縁組制度の意義 3.2特別養子縁組の目的 3.2.1環境継続性の原則 3.2.2兄弟姉妹不分離の原則 3.2.3子の意思尊重の原則 3.2.4母親優先の原則 3.3特別養子縁組の成立要件 3.4特別養子縁組の成立要件の考察 3.4.1実親の同意がある 3.4.2養親が25歳以上である 3.4.3養子が6歳未満である 3.4.4半年以上の監護(試験養育)がある 3.5特別養子縁組の問題点 4.普通養子縁組の運用状況 4.1養子縁組の件数 4.2相続資格の重複問題 5.代表的な養子縁組と法定相続の関係 5.1祖父と孫との養子縁組(孫養子) 5.2兄弟姉妹間の養子縁組 5.3特別養子縁組 5.4普通養子縁組 6.おわりに

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