- 著者
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佐藤 勝明
- 出版者
- 和洋女子大学
- 雑誌
- 和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
- 巻号頁・発行日
- no.60, pp.210-199, 2019-03-31
荷兮編『冬の日』(貞享二年刊か)は貞享元年冬の旅中に芭蕉が名古屋の連衆と巻いた五歌仙を収め、俳諧史上画期的な連句集として知られる。しかし、これが突如として生まれたものかどうかを言うためには、同書以前の作品と比較する必要があろう。そこで、本稿ではその作業の一つとして、芭蕉が名古屋に入る前、大垣で嗒山・木因・如行と四人で巻いた「師の桜」歌仙(『元禄風韵』所収)を取り上げ、それぞれの付合を、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。そして、表現面での難点が多く、付合や一巻の展開にも問題は指摘できるものの、疎句化を意識した付け方が進行しつつあることも認められ、たしかに『冬の日』につながる歌仙であることを明らかにする。