著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.61, pp.243-254, 2020-03-31

元禄期の俳諧の内実を探るために、蕉風以外の未注釈文献から興味深い連句作品を選び、〔見込〕〔趣向〕〔句作〕の三段階分析の手法を用いて、各付合のありようを分析する。本稿はその第一弾であり、無倫編『俳諧 紙文夾』(元禄十年秋序)に収められる、不角・無倫・里風・我笑・和英による五吟歌仙を対象とする。そして、その分析により、当歌仙でも心付(句意付)が主流となっていることは確実ながら、前句にふさわしい場面を想像し、位を重視して付けるという芭蕉流の意識を見て取ることはできず、詞の連想に頼った側面も少なからずあることを明らかにする。
著者
佐藤 勝明 Katsuaki SATO
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.62, pp.201-212, 2021-03-31

蕉風以外の未注釈の連句作品を分析する第二弾として、無倫編『俳諧紙文夾』(元禄十年秋序)に収められる、嵐雪・無倫・艶士・止水による四吟歌仙を対象とする。そして、その分析により、嵐雪と無倫らの間に不協和音は感じられず、芭蕉流の付け方が共有されていると見られるものの、各付合では詞の連想に頼った側面もあり、一巻全体では変化を重んじる意識が希薄であることを指摘する。
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.60, pp.210-199, 2019-03-31

荷兮編『冬の日』(貞享二年刊か)は貞享元年冬の旅中に芭蕉が名古屋の連衆と巻いた五歌仙を収め、俳諧史上画期的な連句集として知られる。しかし、これが突如として生まれたものかどうかを言うためには、同書以前の作品と比較する必要があろう。そこで、本稿ではその作業の一つとして、芭蕉が名古屋に入る前、大垣で嗒山・木因・如行と四人で巻いた「師の桜」歌仙(『元禄風韵』所収)を取り上げ、それぞれの付合を、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。そして、表現面での難点が多く、付合や一巻の展開にも問題は指摘できるものの、疎句化を意識した付け方が進行しつつあることも認められ、たしかに『冬の日』につながる歌仙であることを明らかにする。
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.210-199, 2018-03-31

珍碩編『ひさご』(元禄三年刊)は「俳諧七部集(芭蕉七部集)」の四番目に位置し、奥羽・北陸行脚を終えた芭蕉の新境地を示す連句集として知られている。中でも巻頭の「木のもとに」歌仙は、『猿蓑』所収の諸歌仙とともに、連句史上の傑作として名高く、貞門・談林の古風を完全に打破した新風の一巻とされている。本稿では、この一巻を対象に、それぞれの付合を、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。そして、その付合の多くが、前句がもつ気分・雰囲気に合わせた匂付であることはたしかにもせよ、その「匂」を句姿にも示したものが多いことを指摘し、芭蕉晩年の付合とはその点が異なることを明らかにする。
著者
佐藤 勝明
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.47-56, 2012

<p>芭蕉が「幻住庵記」を書いていた元禄三年、門人らに宛てた書簡には「誹文」「俳文集」といった文言が何度か使われている。去来・凡兆を指導しながら『猿蓑』の編集にいそしんでいた当時、芭蕉は発句・連句のほかに俳文でも一格を立てようとし、『猿蓑』には文章編をも企図していたことが知られている。しかし、その俳文がどのようなものをさすかについて、まとまった発言はないため、なかなか核心に迫れない憾みがある。しかも、『去来抄』に録された言辞によれば、「西鶴」を「俳諧の文章」と認めていたことも知られるため、問題はいっそうぼやけてくる。そうした現状を踏まえ、本稿では、芭蕉が「誹文」として書いたことが確実な「幻住庵記」を取り上げ、その推敲過程を通じて、その趣意が変化していったことを確認する。次に、凡兆の原案に基づき、芭蕉が俳文とすべく改稿したと見られる「烏之賦」、芭蕉が俳文と認めていたらしい嵐蘭の「焼蚊辞」を取り上げ、ここに俳文の基本的な性格のあることも確認する。これらを合わせることから見えてくるのは、人間の内面をとらえようとして、芭蕉が苦心惨憺していた姿であり、また、割り切れない問題の前で迷う姿そのものを、文芸的な趣意として発見していく様相である。そして、これが『おくのほそ道』の執筆につながっていくこと、同書は紀行文であると同時に俳文の集でもあって、やはり曖昧性を趣意としている条が見られること、その際に西鶴の書く草子が一つの先達でもあったであろうこと、などを論じていく。さらに、仮名草子と俳文の関係をどう見るかという問題にも言及し、近世前期の俳文を考えるには、芭蕉の考えに沿いながら慎重に見極めていくしかない、ということを結語とする。</p>
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.174-163, 2017-03-31

俳諧史上の傑作の一つとして知られる『此ほとり一夜四歌仙』の中から、巻頭の「薄見つ」歌仙を取り上げ、各付合の分析を通して、蕪村連句の特色を探る。それぞれの付合は、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。その結果として言えるのは、古典趣味や中国趣味など、題材の偏りが多分に見られること、前句をよく検討してから趣向を立てるのではなく、前句の詞や表現から喚起されたこと(それは自分たちの嗜好にかなう方向で多く選ばれる)をもとに付句を考えていくこと、の二点である。すなわち、芭蕉流の付合手法とは異なる面が多く、蕪村一流の美的世界が構築されているのであり、今後は、そのことを前提に蕪村連句と取り組むことが肝要と言える。
著者
佐藤 勝明 玉城 司 伊藤 善隆 神作 研一 藤沢 毅
出版者
和洋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

『続猿蓑』の連句について付合分析を行い、「かるみ」が高度な思考活動と句作段階での捨象・推敲を伴って実現することを、明らかにした。それが同時期の俳壇全体の中でどう位置付けられるかを明らかにするため、元禄期の全俳書を調査し、その基礎的なデータを刊行した。その中から、地方俳書の一つである『備後砂』に着目し、その分析を通して、「かるみ」とは異なる地方俳諧の実態を明らかにした。
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋國文研究 (ISSN:02865459)
巻号頁・発行日
no.40, pp.9-18, 2005-03