著者
大倉 正雄
出版者
拓殖大学政治経済研究所
雑誌
政治・経済・法律研究 = Politics, economics and law (ISSN:13446630)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-26, 2019-03

ウィリアム・ペティ(Sir William Petty, 1623-87)の主著『政治算術』(Political Arithmetick)は,名誉革命後の1690年に遺著として刊行された。その頃隣国フランスでは,ルイ一四世の財務総監J・B・コルベールによる経済政策の推進によって,国力・経済力が著しく強力されていた。この著書は,イギリスのライバル国における,このような目覚ましい躍進を目の当たりにして執着された。本書の根底には,隣国の急速な台頭に対する脅威の念が,潜んでいる。その課題は,三大強国オランダ・フランス・イギリスの国力・経済力を分析把握することである。ここでは,ペティが自ら考案した政治算術を駆使して,そのような国力・経済力の分析把握が試みられている。第1・第3章では,オランダ・フランスの国力・経済力に対する比較分析がおこなわれている。フランスは大国である割には,小国オランダと比較して国力・経済力が小さい。そのような命題が掲げられている。算術的分析にもとづいて,その命題が真であることを論証する作業がおこなわれている。しかしながら,その分析の展開の仕方には議論の余地がある。そこで採用された分析的枠組みは,妥当ではない。そのために,この算術的分析は当の命題が真であることを,十分には論証していない。

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