- 著者
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中尾 和昇
- 出版者
- 奈良大学
- 雑誌
- 奈良大学紀要 = Memoirs of Nara University (ISSN:03892204)
- 巻号頁・発行日
- no.47, pp.280-263, 2019-02
" 本稿は、文化九年(一八一二)刊の馬琴合巻『千葉館世継雑談』を翻刻・紹介するものである。 本作は、千葉家の御家騒動に、狐の怪異や鼠の活躍をからめた怪異譚である。千葉家に関しては、『新累解脱物語』(同五年[一八〇八]刊)や『南総里見八犬伝』(文化十一年~天保十三年[一八一四~四二]刊)などの読本でしばしばとりあげられている。とくに、その当主自胤に関して、『八犬伝』では「暗愚の武将」として描かれるものの、本作ではその性質は兄実胤に賦与され、それとは対照的に、自胤は善良な君主として描かれている。歴史上の人物に対する善悪評の変化は、馬琴の小説作法を考えるうえで、注目すべき点といえる。本稿で取り上げる所以である。"