- 著者
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高橋 綾子
- 出版者
- 東洋大学大学院
- 雑誌
- 東洋大学大学院紀要 = Bulletin of the Graduate School, Toyo University (ISSN:02890445)
- 巻号頁・発行日
- no.55, pp.21-30, 2019-03
本研究の目的は、以前妖怪が果たしていた役割を現代では何が代わりに担っているのかについて社会心理学的手法を用い探索的に検討することである。本論では妖怪を「未知なる奇怪な現象または異様な物体であり、人間に何らかの感情や行動を生じさせ、かつ、固有名詞を持ち、社会的役割を果たすもの」と定義し、社会や人間に対する妖怪の作用を「社会的役割」と呼ぶ。本研究では社会的役割に着目し、妖怪事典の内容分析による代表的な妖怪の類型化(高橋・桐生, 2018)の結果を用い、以前妖怪が果たしていた社会的役割を現代では何が代わりに担っているのかについての探索的な検討を試みた。妖怪の類型化では3つのクラスタが得られ、クラスタごとの特徴や各クラスタに属する妖怪の特性が大まかに把握できたと同時に、妖怪の特性と恐怖喚起、注意喚起といった社会的役割との関連が示唆された。現代における代替物においても同様に3クラスタが得られたが、分布には偏りが見られ、代替物が補完できていない機能がある可能性が示唆された。今後は本結果をもとに現代における社会的役割の置換対象、表出方法、過不足の有無などについてより詳細に検討する。