- 著者
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中村 文哉
- 出版者
- 山口県立大学
- 雑誌
- 山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
- 巻号頁・発行日
- no.12, pp.51-87, 2019-03-29
本稿の主題は、1907年に公布された「癩豫防ニ關スル法律」(1907年法)と、それを1931年に改正した「癩豫防法」(1931年法)との比較を通して、両者の各條文間の異同を明らかにし、1907年法および1931年法との不連続性と連続性を明らかにする。更に1907年法および1931年法のそれぞれの「施行規則」の條文間の異同を追う。これらの法律・規則には、対応関係がみられるので、1907年法から1931年法に継承された点と、大きく改正された点を明らかにすることができる。更に1931年法「施行規則」の各條項に示された規定が、「癩豫防法施行細則(沖繩縣)」および「癩豫防法施行手続(沖繩縣)」という地方制度の各條項と、如何なる連関のもとに、盛り込まれていったのかを、それらの各條項から類推することを通して、当時の沖繩縣下のハンセン病問題の輪郭を、示したい。但し、本稿は、1931年法改正点の、大きな焦点となる<從業禁止>関連規定と<生活費補給>関連規定をめぐる地方制度の検討は、紙幅の都合上、別稿を用意する。本稿を端緒とする一連の考察の最終的な目的は、「癩豫防法」と沖縄社会との関連を、同法の関連地方制度である「癩豫防法施行細則(沖繩縣)」および「癩豫防法施行手続(沖繩縣)」の條文を踏まえて、捉え返すことにより、何が観えてくるのかを、示すことにある。その際の問題の所在は、ハンセン病療養所を前提とする「癩豫防法」は、その前提となる療養所なしに、如何に機能し、ハンセン病者たちに、どの様な現実を帰結せしめたのかを、明らかにすることである。