著者
宮嵜 麻子
出版者
東洋大学人間科学総合研究所
雑誌
東洋大学人間科学総合研究所紀要 (ISSN:13492276)
巻号頁・発行日
no.21, pp.225-241, 2019-03

古代イベリア半島には、多様な先住民が生きていた。彼らの文化は、ローマ帝国の統治下でローマ文化に統合されたと考えられている。それは、彼らが固有の世界を捨て、ローマ帝国の民となったことを意味する。本稿はこの文化的統合が進んだプロセスを究明するための予備的な作業である。第一に、イベリア半島研究がローマ帝国形成過程の理解にとって、重要であることを示す。この半島に設置された属州ヒスパニアにおいて、ローマ帝国は帝国統治体制を確立したからである。第二に、文化的統合のプロセスを、「ローマ化」という表現で検討することの有用性を示す。次いで、ローマ化のケーススタディとして、半島南部の都市コルドバを取り上げることが適切であることを述べた上で、最後にコルドバの起源の概観から、この都市の住民の多くが先住民出自であったことを明らかにする。こうして、コルドバのローマ化を検討するにあたっては、先住民出自の人々の立場ならびに行動とその動機を検討する必要があることが明らかとなり、コルドバ研究の方向性が定まることになる。

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