著者
佐藤 康行
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p121-144, 1987

従来の親分子分関係の研究は、主として山梨県をフィールドにしておこなわれてきたため'その多様性が十分に明らかにされてきたとはいえない。本稿では、新潟県妙高高原町杉野沢地区の親分子分関係を考察した。杉野沢の親分子分関係は、主として農作業の共同集団であるマキの内部で結ばれてきている。マキは、本分家のほかに、婿や養子をやったりもらったりしている本家格の家とその分家を含んでいる。親分子分関係は、マキの内部で、主に本家格の家どうしが互いに親分子分をしあう形態と本家格の家が分家格の家を子分にする形態の二つがある。しかも、それらはいずれも世襲的、主従的ではなく、親和的融和的である。その点で、杉野沢の親分子分関係は、「大垣外型」と「上湯島型」の校合ないし中間と考えられる。槻分子分関係のこのような性質は、家の行邪を司る「亭主役」の性質と同じである。杉野沢においては、かつては「亭主役」は婿や養子をやったりもらったりしてきた家で、なおかつ妻の実家であったり、姉妹が嫁いでいる家どうしの問で相互におこなっていた。また、本家が分家の「亭主役」をおこなっていたばかりでなく、妻の実家や婿にいった家が「亭主役」をおこなっていた。「亭主役」が有するこのような家の関係は、家の系譜関係に基づく権威並びに主従関係を壊す側面をもっている。親分子分関係が必ずしも本分家関係と重複せず、親類関係の問で結ばれていることのなかに、「亭主役」が有する家の性格が窺えるのである。

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