著者
佐藤 康行
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.11-21, 2011-07-16 (Released:2014-02-07)
参考文献数
12

日本は財政再建や社会保障改革という大きな政治課題を抱えている.地方自治体は国に先行してすでにこうした問題の解決を迫られている.たとえば佐渡市は,人口減少に加えて生産高と財政が縮小する社会になっている.また,環境に優しい福祉の充実した地域づくりをしている点で持続可能な社会を構築している.こうした点で,まさしく佐渡市は日本の縮図を成していると言える. 初めに,佐渡市の人口,世帯数,高齢化率,生産高,財政規模の推移を概観し,トキが生息できる環境に優しい島づくりと福祉社会の形成を進めてきた経緯を見る.その後,2つの集落を取り上げ,持続可能な生計アプローチの観点から地域づくりを比較考察し,地域再生の条件を検討する.その結果,2つの地区のあいだで経済資本や人的資本が相違していることに加え,文化資本の性質の相違と社会関係資本の質と量が相違していることを示す.
著者
佐藤 康行
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p121-144, 1987

従来の親分子分関係の研究は、主として山梨県をフィールドにしておこなわれてきたため'その多様性が十分に明らかにされてきたとはいえない。本稿では、新潟県妙高高原町杉野沢地区の親分子分関係を考察した。杉野沢の親分子分関係は、主として農作業の共同集団であるマキの内部で結ばれてきている。マキは、本分家のほかに、婿や養子をやったりもらったりしている本家格の家とその分家を含んでいる。親分子分関係は、マキの内部で、主に本家格の家どうしが互いに親分子分をしあう形態と本家格の家が分家格の家を子分にする形態の二つがある。しかも、それらはいずれも世襲的、主従的ではなく、親和的融和的である。その点で、杉野沢の親分子分関係は、「大垣外型」と「上湯島型」の校合ないし中間と考えられる。槻分子分関係のこのような性質は、家の行邪を司る「亭主役」の性質と同じである。杉野沢においては、かつては「亭主役」は婿や養子をやったりもらったりしてきた家で、なおかつ妻の実家であったり、姉妹が嫁いでいる家どうしの問で相互におこなっていた。また、本家が分家の「亭主役」をおこなっていたばかりでなく、妻の実家や婿にいった家が「亭主役」をおこなっていた。「亭主役」が有するこのような家の関係は、家の系譜関係に基づく権威並びに主従関係を壊す側面をもっている。親分子分関係が必ずしも本分家関係と重複せず、親類関係の問で結ばれていることのなかに、「亭主役」が有する家の性格が窺えるのである。
著者
佐藤 康行
出版者
日本村落研究学会
雑誌
村落社会研究ジャーナル (ISSN:18824560)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-35, 2010 (Released:2013-01-26)
参考文献数
65

This article considers contemporary conditions of warichi in both irrigation and forests in Nishikanbara-gun, Niigata prefecture, from the perspective of the commons. The warichi , allegedly established in early modern Japan, is a redistribution system of arable land and forest to share risks associated with natural disasters and to pay land taxes proportionally among landholders in each village. Therefore, the warichi is a corporate form of landholdings. This article presents research from the contemporary conditions of warichi in two cases. I found that the warichi formally remains in the mountain forest, while it has been eliminated in the cultivated land holdings. Considering the landholders’ managing irrigation systems today, warichi could be called a commons. The mountain forest can be said to continue to be commons in that ordinary people can access the areas and enjoy climbing the mountain. Furthermore, this research finds that the mountain forest would be better managed by a cooperative network between mountain landholders, local public administration, and volunteer groups.
著者
長谷部 弘 高橋 基泰 平井 進 山内 太 柘植 徳雄 佐藤 康行 村山 良之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、17~19世紀近世日本における村落社会(長野県上塩尻村ほか)を基準として、16~18世紀におけるイングランド村落社会(ケンブリッジシャー)と北西ドイツ村落社会(東部北海沿岸地方)とについて、現地の研究者の協力を得て、実証的比較研究を行った。近世日本村落を構成した共同性の重層的構造からみると、16~18世紀の英独両農村社会の事例については、史料制約性による直接比較の困難性があり、従来共同体とされてきた「村落」や「家族」についての再解釈が必要であり、従来親族ネットワークやサーバント制度、そしてマルク共同体等土地共有共同体の再検討が必要であることが確認された。
著者
山内 太 長谷部 弘 高橋 基泰 佐藤 康行 村山 良之 岩間 剛城
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、近世村落社会における農民的土地所有の性格について、特に新潟県の割地制度を素材としながら、実証的に明らかにしようとしたものである。旧上塩尻村(長野県上田市)の事例研究をベースとして、旧中郷屋村等新潟県蒲原平野に位置する、かつて割地を行っていた村落の資料調査を行い(継続中)、共同体的な土地所有制度であると見なされてきた割地が、この地域の自然環境、並びに村落構造と密接な関連をもちながら行われていたという事実を明らかにしつつある。