- 著者
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松田 智子
- 出版者
- 奈良学園大学人間教育学部
- 雑誌
- 人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.1, pp.7-15, 2020-01
明治以降、国民全体の道徳的価値の育成において、学校教育をコントロールする教育行政は、良い意味や悪い意味においても、大きな役割を果たしてきた。本稿では教育行政の中で、道徳教育=修身が義務教育成立期に、どのような政策のもとに推進されてきたかを歴史的に概観することとする。江戸時代の儒教主義的な道徳政策は、現象面においては、明治政府の欧化主義的な意向を受けて変化したが、その後「教育勅語」により、道徳教育=修身の基本的な中身が、文部行政により大きく方向転換される。明治維新後の教育行政は短期間のうちに、現象面では180度「保守」から「開明」に、またはその反対に揺れ動いていくように見える。しかし本稿では、道徳教育=修身の基盤となる思想には大きな変化がないことも明らかにする。天皇を中心とした復古主義と儒教倫理は、表面上の教育政策は変われども、内包され継続されているのである。