著者
松田 智子
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.50, pp.85-99, 2010-03

本稿の目的は,DV被害の実態と構造を概観した上で,DV被害者支援の現状について検討を行い,今後の対策の課題について明らかにすることである。本稿では第1に,2008年度の全国調査をもとにDVの実態を明らかにしたが,前回の2004年度の調査と比較して数値の変動の幅は小さく,DVが社会全般に広がりをもつ深刻な問題であることが改めて明らかになった。第2に,DVが生み出される構造についてイデオロギー,社会構造,プロセス,リスク要因の4つの次元から再整理を行った。第3に,DV被害者をめぐる支援体制について,法的な対応,警察の対応,地方自治体の取組を中心にその現状と課題について検討を行った。「配偶者暴力防止法」の成立は,「法は家庭に入らず」原則を打破した画期的なものであり,その後の2度の改正によって,DVの防止と被害者の保護の具体的内容が強化されてきた。しかし被害者支援の多くは対症療法的であり,質・量ともに更なる支援体制の強化が求められる。DVの実態DVの構造配偶者暴力防止法保護命令制度配偶者暴力相談支援センター
著者
松田 智子
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.7-15, 2020-01

明治以降、国民全体の道徳的価値の育成において、学校教育をコントロールする教育行政は、良い意味や悪い意味においても、大きな役割を果たしてきた。本稿では教育行政の中で、道徳教育=修身が義務教育成立期に、どのような政策のもとに推進されてきたかを歴史的に概観することとする。江戸時代の儒教主義的な道徳政策は、現象面においては、明治政府の欧化主義的な意向を受けて変化したが、その後「教育勅語」により、道徳教育=修身の基本的な中身が、文部行政により大きく方向転換される。明治維新後の教育行政は短期間のうちに、現象面では180度「保守」から「開明」に、またはその反対に揺れ動いていくように見える。しかし本稿では、道徳教育=修身の基盤となる思想には大きな変化がないことも明らかにする。天皇を中心とした復古主義と儒教倫理は、表面上の教育政策は変われども、内包され継続されているのである。
著者
篠島 直樹 前中 あおい 牧野 敬史 中村 英夫 黒田 順一郎 上田 郁美 松田 智子 岩崎田 鶴子 三島 裕子 猪原 淑子 山田 和慶 小林 修 斎藤 義樹 三原 洋祐 倉津 純一 矢野 茂敏 武笠 晃丈
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.235-242, 2019 (Released:2019-11-15)
参考文献数
14

【背景・目的】当院では難治性てんかんの患児に「ケトン食」を40年以上提供してきた.その経験に基づきIRB承認の下,悪性脳腫瘍患者を対象にケトン食の安全性,実行可能性,抗腫瘍効果について検討を行った. 【対象・方法】2012年11月から2018年10月までの悪性脳腫瘍患者14例(成人10例,小児4例).栄養組成はエネルギー30~40kcal/kg/日,たんぱく質1.0g/kg/日,ケトン比3:1のケトン食を後療法中ないし緩和ケア中に開始し,自宅のほか転院先でもケトン食が継続できるよう支援を行った. 【結果】ケトン食摂取期間の平均値は222.5日(5‐498日),空腹時血糖値および血中脂質値はケトン食摂取前後で著変なかった.有害事象は導入初期にgrade1の下痢が2例,脳脊髄放射線照射に起因するgrade 4の単球減少が1例でみられた他,特に重篤なものはなかった.後療法中に開始した10例中9例が中断(3例は病期進行,6例は食思不振など),緩和ケア中に開始した4例中3例は継続し,うち2例は経管投与でケトン食開始後1年以上生存した. 【考察】後療法中にケトン食を併用しても重篤な有害事象はなく安全と考えられた.長期間ケトン食を継続できれば生存期間の延長が期待できる可能性が示唆された.中断の主な理由として味の問題が大きく,抗腫瘍効果の評価には長期間継続可能な美味しいケトン食の開発が必要と考えられた.
著者
戸田 すま子 渡部 節子 松田 智子 松田 好雄 原口 俊蔵 池田 耕三 奥田 研爾
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.231-235, 2006-12-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

二酸化塩素 (ClO2) は安全性の高い消毒薬として古くから用いられているが, 各種微生物に対する殺菌効果を検討した系統的で詳細なデータはこれまであまり発表されていない. そこで今回我々は, 二酸化塩素 (クリーンメディカル®) を用い, その殺菌および静菌的効果の検討を行った. その結果, 二酸化塩素 (600ppm) を用いた場合, Salmonella enteritidisは5分間, Pseudomonas aeruginosa, Esckerichia coliは10分間, Serratia marcescensは15分間, Staphylococcus aureus, Candida albicansは30分間, methicillin-resistant Stphylococcus aureusは60分間の作用で, 菌数が検出限界以下になることが明らかになった. 二酸化塩素は安全性が高く, 一般的な消毒薬の一つである次亜塩素酸のような刺激臭も無いため, 病院内・介護施設等における環境・機器の消毒薬として大変有望であると考えられ, 今後医療の現場への更なる応用が期待される.
著者
松田 智子
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.99-110, 2001-03-01

本稿の目的は,性別役割分業を基盤とする高齢夫婦の問題,特に高齢男性の配偶者への依存性に焦点をあて,その依存性を規定している要因を明らかにすることである。ロジスティック回帰分析の結果,配偶者への依存度が高い群と低い群を分けるのは,学歴,家事遂行度,夫婦愛意識の3変数であった。すなわち,高学歴の男性,家事遂行度の低い男性,夫婦愛意識が強い男性で配偶者に対する依存度が高くなっていた。これらの分析結果から,高齢男性の中でも特に高学歴層に配偶者への依存度が強いこと,高齢男性の配偶者に対する依存性を軽減するためには,男性の家事分担の促進,夫婦愛にとらわれない意識が重要であることが明らかとなった。
著者
松田 智子
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.149-156, 2018-07

学校園では道徳教育の生命尊重の項目の目標達成のために、絵本を教材として活用する機会もあるが、死をテーマとした絵本はほとんど取り上げられることはない。これは日本の無宗教な教育背景や、子どもに死は無縁であるという教育観によるところが大きい。本来、生と死は、表裏一体であり、子どもの日常生活の中に死が見えなくなっている現代社会だからこそ、死を見つめた生命尊重の教育が必要である。死を考えることは、つまり生を考えることであり、道徳の生命尊重の教育の目標達成に結び付く。本稿は、谷川俊太郎の絵本「死んでくれた」を教材として、子どもへの読み聞かせによる保育と低学年に授業を行った実践報告の分析である。実践中の子どもの反応や授業後の振り返りや感想から、道徳の生命尊重の教材として、「死」を扱った絵本の効果は高いと考えられる。
著者
北村 八祥 松田 智子 原 正之 矢野 竹男
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.114-119, 2015

厚生労働省は健康の維持・増進,生活習慣病予防を目的に,各栄養素の摂取量について基準を策定している(厚生労働省,2010)。多量ミネラルとしては,カルシウム(Ca),リン(P),マグネシウム(Mg),カリウム(K)およびナトリウム(Na)の5要素が取り上げられており,農産物はNaを除く4要素の重要な供給源となっている(厚生労働省,2010)。農産物に含まれるミネラル含量は,日本食品標準成分表2010(文部科学省,2010)に品目毎の代表値が示されているが,利用部位による違いは考慮されていない。今後,農産物の加工・業務用需要が増加する中,用途に合わせた部位の活用が進むことが考えられ,部位別のミネラル含量を明らかにすることには意義がある。特に健康増進を目的としたメニューや農産加工品の開発への利用価値は非常に高い。そこで,摂取量が最も多いコメ(Oryza sativa L. ),代表的な加工・業務用野菜であるキャベツ(Brassica oleracea L. var. capitata),タマネギ(Allium cepa L. )およびニンジン(Daucus carota L. )について,部位別のミネラル含量を調査し,ミネラルに着目した農産物提供の可能性を検討した。