著者
小嶋 洋介
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.92, pp.267-296, 2019

井筒俊彦にとって,コトバの問題は,その哲学の中核をなしている。しかしながら,その言語哲学は,通常の意味での「言語学」とは言えない。「存在」問題から切り離されることはなく,いわば言語=存在哲学を形成しているからである。同時に,井筒にとっての「存在」哲学は,「一なるもの」の位相に立つ体験知を要請するものでもある。いわゆる「神秘哲学」の「視座」を懐胎している。故に,言語=存在神秘哲学とでも言えるものを形成しており,一見,特異な言語哲学であるという印象を与えるが,「東洋哲学」の領域においては孤立した思想ではない。種々の類縁・相関する思想を見出すことができ,井筒はそこから東洋哲学における「共時的構造」を紡ぎ出している。そもそも井筒の多くのテクストは,異種の複数テクストを横断的に接合しつつ,その編目に自身の哲学を縫いこんでいくスタイルを取っている。本論考で,我々は空海の言語思想に井筒と相応する哲学を見出している。論の中核は,空海思想の読みを通じて,そこに井筒の言語=存在哲学を現成させる試みにある。もとよりこの一論考で,井筒の言語哲学の全貌を論じ尽くしているわけではない。ささやかな一歩を刻むものにすぎないことを,明記しておく。

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CiNii 論文 -  言語と曼荼羅 : 井筒俊彦における〈言語哲学〉 https://t.co/C2Ikjtyi0t #CiNii

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