著者
畑本 裕介 畑本 裕介 HATAMOTO Yusuke ハタモト ユウスケ Hatamoto Yusuke
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学人間福祉学部紀要 (ISSN:21874344)
巻号頁・発行日
no.11, pp.17-30, 2016-03-16

この論文の目的は、戦後日本におけるナショナル・ミニマム論の展開を追いかけ、この議論の可能性と限界を探ることである。ナショナル・ミニマム概念は、その起源から、最低生活費保障に留まらない多義的なものであった。その多義性が歴史的にどう展開したかを追い、ナショナル・ミニマム概念の現代社会福祉行政における位置付けを明らかにする。まずは、第2節において、本来多義的であったウェッブ夫妻が生み出したナショナル・ミニマム概念が、ベヴァリッジ報告に受け継がれる際に最低生活費保障に意味合いを限定させたことを確認する。第3節において、1960年代後半にナショナル・ミニマム概念が、シビル・ミニマム概念やソーシャル・ミニマム概念といった概念に姿に変え、その多義性を取り戻す状況について確認する。第4節では、多義的となったナショナル・ミニマムが、中央集権的再分配機構の手段に転嫁した結果、地方分権論者によって批判の対象となってしまったことを確認する。その後、ナショナル・ミニマム論を擁護する立場からの抵抗が起こったことについても確認したい。最終節においては、ナショナル・ミニマム概念の今後を考察し、社会福祉行政におけるこの概念の可能性について検討することにしたい。

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