著者
佐藤 博 飯野 公彦
出版者
山梨大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 = 教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:18816169)
巻号頁・発行日
no.24, pp.79-85, 2019-02-28

古くから使われてきた鋸であるが、西洋と日本では使い方に違いがある。この違いは東洋と日本の文化の特性にあると考えられる。本研究では、西洋と日本を含む東洋の民族性の違い、力の使い方の違い、住居の立て方の違いと自然とのかかわり方とその文化を調べることにより、鋸の発明とその発展について歴史的、教育的観点においてまとめると以下のようになる。 1 西洋の鋸は17世紀に現代の一般的な形になった。日本の鋸は、江戸時代に今日の鋸の種類のほとんどが出揃った。 2 西洋人は、飛び跳ねて力を開放する力、すなわち「押す力」となる。それに対して、東洋人は、地面にしっかり足をつけ倒れない力、すなわち「引く力」となる。 3 西洋では建物をどんな自然条件にも耐え得る様に石で堅牢に造る。これは自然と闘う姿勢である。しかし日本では、自然条件が過酷であるにも拘わらず、建物と外界を遮る物は障子と襖だけであり、自然は敵ではなく共存する相手なのである。 4 西洋では自然は征服して克服してゆくもの、その為に「押す力」が必要になってきます。それに比べ日本では厳しい自然に逆らうのではなく無理なくその力に寄り添う形で文化を形成していて、押すのではなく引く事で力を微妙に制御するという考え方が深く根付いていると考えられている。 5 最初に木材加工を学ぶときには、機械加工は最小限に抑え、手工具によって日本人が永々と築いてきた木工技術を経験する事で、日本人の物作りに対する考え方やそこに至るまでの精神性をも感じてもらえたらと考えている。

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