著者
岡江 恭史
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.23-49, 2004-03
被引用文献数
3

1960年代以降、アジア各国で設立・再編された農業金融制度は、低い資金回収率・高い取引費用等の問題を残した。これに対してベトナムにおいては、ドイモイ政策の一環として設立された農業銀行や貧民銀行といった金融機関の農民への貸付に際して、農民会等の大衆組織が仲介し、またこれらの組織のもとで共同債務グループが結成され、高い資金回収率と取引費用の削減をもたらした。しかし、これらの組織やグループの実態はこれまで明らかにされていない。本稿では、これらの組織やグループの実態を村落構造との関係に着目して明らかにし、良好なパフォーマンスを可能にした背景として集落の重要性を指摘する。筆者がベトナム紅河デルタ農村にて調査を行った結果、以下のことが判明した。銀行貸付を仲介する農民会は予算・人員の面で不充分でその活動も活発とはいえず、グループの共同債務も事実上機能していない。にもかかわらず銀行貸付が債務不履行も出さず良好なパフォーマンスを示しているのは、実質的に集落が貸付仲介を行っているからである。集落は村落内のあらゆる社会組織の基本単位であって、村民にとって最も身近な共同体である。それゆえ、財政的基盤がなくてもモニタリングを行うことは容易である。調査村においては、村落共同体の助けを借りつつ近代的な金融制度が農村部に着実に浸透しているといえる。

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