著者
勝又 健太郎
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.6, pp.51-81, 2004-03

WTO体制下における諸外国のセーフガード(SG)の発動事例について、農産物に関する事例に重点をおいて、発動状況、発動条件の運用実態及びWTOの紛争処理の過程でパネル及び上級委員会により示された発動条件の運用に関する国際規律を整理・分析した。SG協定発効前後で発動件数は、減少から増加に転じた。全体的に農産物の事例の方が鉱工業製品の事例に比べて、発動手段についてはより数量管理的(輸入数量制限、関税割当)、発動期間についてはより長期の措置となっている。農産物に関する事例についての発動条件(輸入増加及び損害指標の定量的評価等)の運用実態については、輸入が減少している事例があり、また、全ての損害指標の評価結果が低下している訳ではなく、評価を定性的・間接的・代替的に行った事例がある。農産物に関する事例の中では、韓国の脱脂粉乳調整品、米国の小麦グルテン及びラム肉、チリの小麦・小麦粉及び食用植物油の輸入に関する措置が紛争案件となり、パネル及び上級委員会で検討されたが、全てSG協定違反とされた。SG協定の規定に対して厳密な解釈が行われ、各国の事例の実態をパネル及び上級委員会が示した国際規律に照らして判断すると、発動条件を完全に満たすことは困難である。発動の前提として、産品の同種性・直接的競合性の解釈や損害指標の評価手法と因果関係の分析手法の確立が不可欠である。

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