著者
鈴木 伸也 矢野 正
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Nara Gakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.39-50, 2020-03

近年、子どもの体がかたい・バランスが悪いなど、運動機能が低下した状態を「運動機能不全」または「子どもロコモ」と呼ばれている。今回は、前回に引き続き「子どもロコモの予防に関する教育実践研究(Ⅰ): 小学5年生1年間の実践を振り返って」の研究を継続し、報告するものである。本研究の目標として、「①C小学校は、けがの発生件数が非常に多い。そのため、ロコモティブシンドロームを予防する体操(以下、ロコモ予防体操)を通してけがをしにくい身体にする。②けが予防についての関心をもち、けがが少なくなったと実感し、ロコモ予防体操に進んで取り組もうとする。③身体を動かす楽しさ、気持ち良さを知り、自ら運動に親しもうとする。」という3つを設定した。今回も、A県B市の公立C小学校第4学年33名(男子19名、女子14名)に対し、1年間にわたり、「朝の会」と「体育の授業時」にロコモ予防体操を実践した。また、この学年は1年生時から毎日宿題として、家庭でもロコモ予防体操を実践している。2018年4月~2018年12月に行った教育実践では、クラス別けが人数は6件と、他のクラスと比べても顕著に少ない結果となった。これは、学校全体で通しても一番少ない結果であった。また、教育実践(Ⅰ)との比較では、学年が違うことも考慮する必要があるが、4年間継続してロコモ予防体操を行っている4年生の方が、顕著にけがの発生件数が少ないことが明らかとなった。2015年4月~2019年3月(4年間の短期縦断コホート研究)に行った教育実践では、クラス別けが人数は他クラスと比べると圧倒的に少ないことが明らかとなった。これにより、毎日家庭で行っているロコモ体操に加え、学校での実践を組み合わせることによって、けがの発生頻度がより減ったものと推察される。さらに、ロコモ体操の実践の効果以外にも、普段から児童にヒヤリハットなどについての声かけ指導を行った。また、週明けや連休明けの過ごし方や雨の日の過ごし方などを丁寧に説明し、周りの環境に左右されずに落ち着いた学校生活を送ることができるよう、子どもたちに意識づけを促すことも、ロコモ予防に関しての手段の一つと考えられる。

言及状況

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