著者
馬場 靖雄
雑誌
社会学研究所紀要 (ISSN:24353833)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-16, 2020-03-31

マスメディアの現状に照らしつつ,「機能分化し閉じられた(オートポイエティックな)システムとしてのマスメディア」というルーマンの議論の射程と有効性を検討する.ルーマンはマスメディアを,機能分化し,「情報/非情報」のコードによって自律化し閉じられたオートポイエティック・システムであると見なす.ルーマンのこの議論は,マスメディアの自律性を過度に強調し,マスメディアと社会(全体社会Gesellschaft)とのつながりを無視して前者の社会的責任を免除するものだとして,しばしば批判されてきた.またマスメディアが社会の諸領域に浸透・融合し影響力を拡大しつつある現状にそぐわないとの指摘も為されている.しかしこの種の批判では,「コードによる自律性」が常に無限遡行の可能性と決定不能性を孕んでいること,あるいは自律性とはこの決定不能性に他ならないことが見逃されている.ルーマンのマスメディア論は,ITの進展・普及によって明らかになりつつある,マスメディア・システムに内在する偶発性・不確定性を理論的に指摘しているという点で,むしろ「先進的」なのである.

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[Luhmann][社会学] 馬場靖雄(2020)「オートポイエティック・システムとしてのマスメディア:ニクラス・ルーマン『マスメディアのリアリティ』を読む」 社会学研究所紀要 (1), 1-16, 2020-03-31

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