著者
中村 哲之
出版者
東洋学園大学
雑誌
東洋学園大学紀要 = Bulletin of Toyo Gakuen University (ISSN:09196110)
巻号頁・発行日
no.29, pp.1-8, 2021-02-15

ヒトを含めた多くの動物は、その脳機能の制約上、ありのままの世界を認識することはしない。それを端的に示す心理現象の1つとして、Goodale, & Milner(1992)は、ヒトの眼はエビングハウス錯視図によって騙されるが、指先の運動機能は騙されないことを示した。また、価値観といった比較的高次な認知機能が知覚の歪みを生じさせる研究も行われている(Bruner & Goodman, 1947 ; 川名・齋藤,2008 など)。本研究では、これらの先行研究を参考に、価値観が知覚・動作に与える影響について検討した。動作条件では、実験協力者に1円硬貨や500 円硬貨などを想像してもらった後で、利き手/非利き手でそれらを想像上で掴んでもらい、その際の親指と人差し指の開き具合を測定した。描写条件では、それらの硬貨の大きさを描いてもらった。実験の結果、動作条件の利き手と描写条件では価値の違いによる硬貨サイズに対する過大・過小知覚が確認されたのに対し、動作条件の非利き手では、それらの効果が消失した。この結果が生じた可能性について、日常生活における動作の特徴の観点から議論を展開した。

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