- 著者
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村端 佳子
黒木 美佐
- 出版者
- 宮崎国際大学教育学部
- 雑誌
- 宮崎国際大学教育学部紀要 教育科学論集 (ISSN:21887896)
- 巻号頁・発行日
- no.7, pp.32-43, 2020-12
平成 29 年に告示された学習指導要領において、外国語活動・外国語の目標の中に「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ」外国語による言語活動を通してコミュニケーションを図る資質・能力を育成することを目指す、という文言が盛り込まれている(文部科学省、2017)。そこで本稿ではそのような言語独特の見方や考え方を英語と日本語の絵本の中に探り、英語に特有な「見方・考え方」を児童に感じさせる可能性を探った。 一般的に英語は説明的で客観的な文章を好み、日本語は論理的な表現は好まず、オノマトペの多様に見られるような感覚的で曖昧な文を好むという違いが見られる。本稿ではそのような違いが日英の絵本にも現れるのかを探るために、英語が原本で日本語に訳されている2冊の絵本『はらぺこあおむし』と『あたまからつまさきまで』の英語と日本語を比較分析した。これらの2冊はいずれもエリック・カールによるもので、日本語でもよく読まれている人気の絵本である。比較してみると、日本語の絵本では、語り口調や劇的要素を用いるという特徴や、変化する人称代名詞に加えてオノマトペの多用から、感覚的で直接的な表現が多く見られるということがわかった。一方、英語の絵本では説明的で分析的および客観的表現が特徴として見られた。このような表現方法の違いや特徴は日本の文学作品にも見られ、日本語と英語の一般的な表現方法の違いと見ても良い。そこで、子供達が慣れ親しんでいて理解が容易であると思われるような英語絵本の読み聞かせをすることは、言語によって物事の描き方には違いがあることや、違いだけでなく日本語と英語の共通点への気づきを促すことへとつながる。このように英語の絵本に触れさせる利点の一つとして、英語の見方や考え方を明確に理解するとまではいかないが、英語独特の表現方法にふれることができる可能性を論じた。