- 著者
-
村端 佳子
- 出版者
- 宮崎国際大学教育学部
- 雑誌
- 宮崎国際大学教育学部紀要 教育科学論集 (ISSN:21887896)
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.1-12, 2018-12
本研究の目的は、日本語母語話者が第二言語としての英語を学ぶことで、日本語の使用や認知になんらかの影響が見られるかどうかを、体の部位を表す言葉に関して調査することである。近年第二言語の学習や使用が母語話者の言語の使用や認知に何らかの影響を与えているという研究が多くなされている(Cook, 2002)。日本語を母語とする話者に関しても、色彩(Athanasopoulos, Damjanovic, Krajciova, & Sasaki, 2011: Murahata, Murahata, & Murahata, 2017)、名詞の複数形(Cook, Iarossi, Stellakis, & Tokumaru, 2003; Murahata, 2012)、分類(Murahata, 2012)などに関する英語学習の影響が報告されている。それでは日本語母語話者が英語を学ぶことで、体の部位の切り取り方になんらかの影響を受けるのだろうか。例えば、日本語の「手」は英語の arm と hand の両方を、「足」は legと foot の両方を指すことがある。また、英語の head には、日本語の「頭」「顔」「首」が、back には「背中」「腰」が含まれる。二つの言語に見られるこのような差のために、二言語使用者(バイリンガル)の言語使用や認知に単一言語話者(モノリンガル)とは異なる差が見られれば、それはマルチ・コンピテンス(multi-competence)の証左となり(Cook & Li, 2016)、バイリンガルのユニークな側面を見ることができる。そこで、本研究では日本語を母語とする英語ユーザを参加者として、英語の能力によって二つのグループに分け、「手」「腕」「足」「脚」「頭」「背中」を指す部分の色ぬり実験を行うことで、英語学習・使用が体の切り分け方になんらかの影響を及ぼしているかどうかを探った。