著者
飯塚 正明
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
no.69, pp.307-310, 2021-03-01

[要約] 電気技術者の多くは,子供時代にラジオ製作から電気・電子技術に興味をもち,技術者の道に進んでいる者が少なくない。初めて作るラジオ教材は,AM ラジオである。これは,回路が簡単であることだけではなく,簡単な回路であることから,部品一つ一つが特性に影響をおよぼす回路であり,部品の改良と共に特性の改善が得られ,技術の核心に触れることが出来る。しかし,近年,このAM ラジオで受信可能なAM 放送の放送停止が進められている。我が国では,今日でもAM放送が続けられているが,すでに,海外では放送を停止した国もある。テレビ放送がアナログ放送から地上デジタル放送への変更にともない放送電波帯がVHF からUHF へと移動した。その結果,FM ラジオ放送の利用電波帯が広がり,ワイドFM となった。広がった電波帯にAM 放送と同じ放送が行われるようになり,FM ラジオだけで,FM 放送だけでなく,AM放送と同じ内容の受信も可能となった。これは,AM 放送電波帯の停止の可能性が高まったといえる。AM 放送が停止してしまうと,技術者育成のきっかけでもあるAM ラジオ教材が製作できなくなってしまう。本研究では,AM ラジオ教材にかわるFM ラジオ教材の検討を行った。FM ラジオでは,AM ラジオに比較し,復調回路が複雑である。AM ラジオでは,鉱石ラジオと呼ばれる無電源ラジオが作製教材の代表例である。無電源ラジオとして,FM 復調回路だけのラジオの検討を行った。筆者の環境では,電界強度が低く,放送の受信が出来ないため,増幅回路を検討した。回路が複雑なラジオでは,初心者の製作には困難であるため,トランジスタ1石で検討を行った。その結果,超再生方式のFM ラジオ回路であれば,増幅度を高くすることが可能であり,1石での回路が作製できることから,超再生FM ラジオ作製教材の検討を行った。

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