著者
山岸 美希 板倉 嘉哉
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.299-305, 2007-02

映画「風の谷のナウシカ」に登場する架空の乗り物であるメーヴェの飛行可能性を検討するために,実機を忠実に再現する模型を製作し,風洞試験によりメーヴェの空気力学的特性を明らかにした.また,風洞試験結果に基づいて,飛行に必要な基本的な性能および安定性の評価をおこなった.その結果,メーヴェは飛行を実現するのに十分な性能を有するが,現在の機体形状のままでは縦揺れの安定性を確保することができず,飛行の実現は困難であることがわかった.Mowe is a fictional flying vehicle appeared in the animated cartoon "Nausicaa of the Valley of Wind". The airframe configuration of Mowe is very unique without vertical and horizontal tail, and its main wing is only equipped with flaperon as a pitch and roll control surface. However, to realize a tail-less plane such as the Mowe, detailed consideration about the aerodynamic configuration is needed from a viewpoint of aeronautical engineering. In this paper, in order to obtain aeronautical characteristics, aerodynamic forces and moments acting on the scale model with deflectable flaperon were measured experimentally by using wind tunnel at Chiba University. And we also estimated aerodynamic performance and stability based on a result from wind tunnel testing and considered realization of the flight.
著者
山岸 美希 板倉 嘉哉 Yamagishi Mickey 板倉 嘉哉 イタクラ ヨシヤ Itakura Yoshiya
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.299-305, 2007-02

映画「風の谷のナウシカ」に登場する架空の乗り物であるメーヴェの飛行可能性を検討するために,実機を忠実に再現する模型を製作し,風洞試験によりメーヴェの空気力学的特性を明らかにした.また,風洞試験結果に基づいて,飛行に必要な基本的な性能および安定性の評価をおこなった.その結果,メーヴェは飛行を実現するのに十分な性能を有するが,現在の機体形状のままでは縦揺れの安定性を確保することができず,飛行の実現は困難であることがわかった.Mowe is a fictional flying vehicle appeared in the animated cartoon "Nausicaa of the Valley of Wind". The airframe configuration of Mowe is very unique without vertical and horizontal tail, and its main wing is only equipped with flaperon as a pitch and roll control surface. However, to realize a tail-less plane such as the Mowe, detailed consideration about the aerodynamic configuration is needed from a viewpoint of aeronautical engineering. In this paper, in order to obtain aeronautical characteristics, aerodynamic forces and moments acting on the scale model with deflectable flaperon were measured experimentally by using wind tunnel at Chiba University. And we also estimated aerodynamic performance and stability based on a result from wind tunnel testing and considered realization of the flight.
著者
安部 朋世 神谷 昇 西垣 知佳子 小山 義徳
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.209-213, 2017-03

[要約] 本稿は,「データ駆動型学習(Data-Driven Learning; DDL)」開発の基礎的資料とすべく,現行の中学校国語教科書及び英語教科書に現れる文法用語を調査し,DDLによる文法指導における注意点や問題点等を整理することを目的とするものである。具体的には,中学校国語教科書と中学校英語教科書における「品詞」の現れ方と,小学校及び中学校国語教科書と中学校英語教科書における「文の構成要素」に関する用語の現れ方を調査し,国語と英語の品詞の内実の違いについての注意点や,文法用語の使用状況に関する問題点を明らかにするとともに,本研究を踏まえ,今後実践研究における分析を行うことにより,文法用語の適切な使用のあり方について考察を行っていく必要があることを指摘した。
著者
金子 功一 大芦 治 Kaneko Kouichi 大芦 治 オオアシ オサム Oashi Osamu
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.79-87, 2010-03

本論文では,近年の学習方略に関する海外および日本における研究の動向を分析した。その結果,学習方略はその研究対象として,学習全般と個別の教科を扱ったものの双方があること,研究の多くが自己効力感や価値といった動機づけ要因,学習方略に対する認知や学習観を代表とする自己制御要因などとの関連を検討していることなどが明らかになった。また,学習方略の測定に関する諸問題についても検討を加えた。そして,今後の課題として,学習方略と発達差,将来の目標,教師の職業的援助などに関する研究を行っていく必要性を論じた。
著者
平出 昌嗣 ヒラデ ショウジ Hirade Shoji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.359-364, 2013-03

イギリスは旧世界として階級意識が根強くあり,下層から上層階級へ出世する物語,あるいは階級の束縛から脱出する物語など,小説も階級意識を多少なりとも反映する。一方,新世界アメリカは自由の国であり,旧世界のような階級意識はないが,代わりに,南部では黒人差別,北部では貧富の差が社会問題としてよく描かれる。また人間の成長を描く際に,イギリスは経験に価値を置き,アメリカは無垢に価値を見る傾向がある。前者では,主人公はつらい経験を通して真の自己に目覚め,人間的に成長するが,後者では,どんな経験によっても失われることのない生まれつきの心が重視される。また各文学を特徴づけるイメージを一つ挙げれば,アメリカ小説は道,イギリス小説は家になる。道は自由,あるいは未来志向の,家は安定,あるいは伝統志向の象徴になる。
著者
花澤 寿 ハナザワ ヒサシ Hanazawa Hisashi
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.269-273, 2010-03

現在までに提出されている摂食障害の進化論的仮説を概観し,進化心理学・進化精神医学による摂食障害の理解と治療の可能性について検討した。主要な仮説として,1. reproductive supression hypothesis 生殖抑制説 2. sexual competition hypothesis 同性間競争説 3. flee from famine hypothesis 飢餓環境からの移動のための適応説 4. Gatward による統合説をとりあげた。いずれの仮説も,現時点では実証困難であるが,摂食障害の不可解な特徴をある程度説明することに成功しており,停滞状態にある摂食障害の病態理解と治療法にあらたな展開をもたらす可能性が示唆された。
著者
畠山 里沙 杉田 克生 大上 順一 杉田 克生 スギタ カツオ Sugita Katsuo 大上 順一 オオウエ ジュンイチ Oue Junichi 下山 一郎 シモヤマ イチロウ Shimoyama Ichiro
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.287-289, 2007-02

認知神経学の観点から,外国語として日本語を学習するイタリア人が,ひらがな・ローマ字を見てから発語するまでの読字反応時間を解析した。外国語の学習効果を客観的に評価していくためにこの検査は有用であると考えられる。We performed a test of "Hiragana" and "Romaji" reading-reaction time to Italian university students who learn Japanese. This test is simple and regarded as a useful method to evaluate their acquisition of foreign language objectively.
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.494-490, 2017-03

[要約] 明治期に短詩型の革新を志した正岡子規は「歌よみに与ふる書」において、『古今和歌集』は「くだらぬ集」であり、紀貫之は「へたな歌よみ」であると痛罵した。この文章は、時代の文脈から切り離されて、現在に至るまで『古今集』のイメージに悪影響を及ぼしている。しかし子規自身の最晩年の歌の中にも、『古今集』的な「こころ」や「ことば」の伝統が色濃く感じられる例がある。このような近代短歌と古典和歌のあいだに存在する連続性を認識することから、文学や言語についてのより豊かな考察が可能になると考える。
著者
村松 成司 藤原 健太郎 伊藤 幹 藤原 健太郎 フジワラ ケンタロウ Fujiwara Kentaro 伊藤 幹 イトウ モトキ Ito Motoki 藤田 幸雄 フジタ ユキオ Fujita Yukio 服部 祐兒 ハットリ ユウジ Hattori Yuji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.351-358, 2010-03

特徴的なトレーニングゆえに活性酸素・フリーラジカルによる酸化ストレスに強くさらされていると考えられる長距離ランナーの生体酸化ストレス及び呼吸機能・代謝に及ぼす活性水素水の影響について検討した。活性水素水摂取は安静時好中球分画及び絶対数の増加を抑えることから,トレーニングに伴う血中好中球の活性化を抑制または活性化した血中好中球を速やかに正常化する可能性が示された。安静時の血清過酸化脂質の変化より,活性水素水摂取がトレーニング由来の生体酸化ストレス障害を抑え,生体機能の維持に寄与する可能性が示された。酸素摂取量・呼吸商・心拍数の変化から,循環器系及び代謝が向上した可能性が示された。安静時の測定結果より活性水素摂取が生体の抗酸化に寄与する可能性を示す結果が示され,また,運動時の代謝及び呼吸循環機能を向上させ,パフォーマンス向上をもたらす可能性が推察された。This experiment was undertaken to investigate the effect of active hydrogen water ingestion on oxidative stress and respiratory function of university long-distance runners, presumably exposed to active oxygen and freeradical materials induced by their particular training. Seven healthy university students trained for 20 days with 2 liters of active hydrogen water (AHW) per day. We compared blood samples and respiratory function at pre and post experiment. The results obtained suggest the possibility that ingesting AHW may inhibit the activation of neutrophilic leukocytes that occur with exercise training. Further, it is suggested that ingesting AHW appears to normalize an activated blood neutrophilic leukocyte response, because the increases in the ratio and quantity of neutrophilic leukocytes at rest was reduced. The changes in serum lipid peroxide seemed to suggest the possibility that AHW could decrease oxidative stress resulting from exercise and contribute to the maintenance of homeostatic physiological function. Oxygen uptake, respiratory quotient and heart rate results seemed to suggest that respiratory and circulatory functions were improved by ingesting AHW. Results suggest the possibility that AHW ingestion contributed to antioxidant effects during training. Furthermore, AHW ingestion may improve exercise performance through its effects on respiratory, circulatory and metabolic systems.
著者
中澤 潤 中道 圭人 朝比奈 美佳 中道 圭人 ナカミチ ケイト Nakamichi Keito 朝比奈 美佳 アサヒナ ミカ Asahina Mika 古賀 彩 コガ アヤ Koga Aya
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.125-130, 2008-03

本研究では,音楽や造形の熟達者と非熟達者の幼少期の環境の違いを検討した。調査1(N =307)では音楽専攻の大学生と,調査2(N =216)では造形専攻の大学生と他の学問を専攻する大学生を比較した。その結果,音楽や造形に熟達している大学生は,そうでない大学生に比べ,幼少期の音楽や造形に関する物理的な環境や人的な環境が整っていたことが示された。さらに,物理的な環境より人的な環境が音楽や造形の熟達には影響している可能性が示された。This study examined differences between environments in young childhood of artistic expert and novice. Ex 1. (N=307) compared expert students in music with novice students, and Ex 2. (N=216) compared expert students in design art with novice students. These results showed that expert students had rich physical and human environments in young childhood more than novice students. In addition, human environments influenced expertise of music and design art more than physical environments.
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.518-511, 2012-03

紀貫之は、最初の勅撰和歌集である『古今集』の編纂作業の中で多くの歌を収集し、またそれらの歌を理解し分類・配列することを通して、和歌についての知見を深めていった。そして得られた知見を自分の歌において確認し、『古今集』に随時反映させていったことは想像にかたくない。貫之は表現の〈型〉についてきわめて意識的な文学者であったが、そのような資質は歌集編纂作業の中で培われたものと見ることができる。先に稿者は歌集編纂の問題を念頭において『古今集』四季歌の表現分析を行なったが、本稿では恋歌をとりあげて、万葉相聞歌以来の〈型〉を継承する歌、『古今集』よみ人知らず歌の新たな動向を捉えた歌、紀貫之から始まる新しい〈型〉を用いた歌のそれぞれについて具体例を挙げて論じる。
著者
白川 健 三崎 凌
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.409-413, 2017-12

[要約] 本論文では,サッカーのPK戦を確率論を用いて分析するアルゴリズムを,中学・高校数学の授業作りの基本素材(元ネタ)となり得る数学モデルとして提案する。また提案モデルの「目標プロファイル」を具体的に構成・検証することによって,モデルが有するPK戦の分析アルゴリズムとしての説得力を数学的に考察する。更に得られた考察を基に提案モデルの達成度を評価し,今後の活動継続に向けて必要となる課題等についても検討する。
著者
伊藤 秀樹 堀下 歩美 保坂 亨
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.29-34, 2011-03

本研究では,長期欠席(不登校)の児童・生徒への支援の一環として教育委員会で行われている家庭訪問相談員事業について,A県3市の聞き取り調査の結果から,事業実施上の工夫と事業が抱える課題の背景・解決策を検討した。事業実施上の工夫については,活動の安全面の確保に焦点を当てて検討し,(1)学校・保護者・指導主事・相談員の4者による事前打ち合わせ,(2)支援事業の使い分け,(3)相談員の2人ペアでの家庭訪問,(4)保護者在宅時の訪問,という4つの工夫を見出した。事業が抱える課題については,(1)保護者の非協力・拒否,(2)義務教育終了後の対応,(3)支援の非継続性という3つの課題に着目し,その背景と解決策について検討を加えた。
著者
佐藤 宗子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.444-436, 2018-03-01

[要約] 一九六〇年代に偕成社は、異なる趣旨のもと、二つの「日本文学」に関する少年少女向叢書を刊行した。一つは「一人一冊」スタイルの「作家」叢書の体裁を強めた「少年少女現代日本文学全集」であり、先行するあかね書房「少年少女日本文学選集」と対比しつつ既に論じたことがある。それに対し、一九六四年刊行開始の「ジュニア版 日本文学名作選」は、「全集」以上に途中での増刊を繰り返しつつ、七〇年代半ばに六〇巻で完結した。この叢書の構成を編年的に把握しながら、作品中心に題目設定がなされたことによりどのような特徴が生まれたか、「全集」との共通要素からは何が言えるか、体験を交えつつ享受の状況の対照をどのように考察しうるか、といった点の追究を行い、長編収録や特定の作家の浮上、新味を持つ作品群の選定など文学研究者の関与のもと「日本文学」の編成が進められた状況を明らかにした。今後は「世界の文学」との関係や同業他社の同種叢書との対照を行うことで、「日本文学」の体系化、規範化が少年少女向けにどのように進展したか、状況把握を進めることとしたい。
著者
羽間 京子 保坂 亨 小木曽 宏
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.13-19, 2011-03

長期欠席(不登校)児童生徒の中には,その背景に児童虐待が疑われる事例が含まれる。学校及び教職員は,児童虐待防止法により虐待の早期発見の努力義務が課せられているが,家庭訪問をしても児童生徒に会えず,状況確認ができない場合がある。本研究は,接触困難な長期欠席児童生徒(および保護者)に学校教職員がとりうるアプローチに関する議論の前提として,保護者の就学義務とその不履行について法的規定や裁判例を整理し,学校教職員の家庭訪問の法的位置づけとその限界を検討した。その結果,就学義務不履行による督促については,議論が「不登校」にマスキングされたまま弁別・整理されていないと考えられた。また,学校教職員の家庭訪問は教育活動の一環として位置づけられており,児童虐待の疑いがあったとしても,保護者が住居への立ち入りを拒否し児童生徒に会わせようとしない場合,教職員は子どもの安全確認まではできないことがその限界として指摘された。
著者
谷藤 千香
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.365-371, 2012-03

近年,中高年のスポーツが盛んになりつつある。海外では比較的以前から多くのマスターズスポーツ大会が行われていたが,日本ではまだその歴史は浅い。そこで,各競技団体が行う単種目のマスターズ大会や複数種目で行われるマスターズ大会の日本と海外の事例から現状と課題をあげ,今後のマスターズスポーツについて検討した。単種目のマスターズ大会は,日本では陸上競技や水泳が多く実施され,また,いわゆるスポーツ種目のマスターズ大会は欧米で非常に古くから存在していた。複数種目の大会では,日本スポーツマスターズにおいて生き甲斐を感じる参加者が多いものの,年齢区分などいくつかの問題点が見うけられたが,国際的に行われている最も大きなマスターズの大会であるワールドマスターズゲームズでは,可能な限り誰もが参加できるよう門戸を開き,多くの参加者をひきつけている。今後のマスターズスポーツには,こうした競技スポーツとレクリエーションスポーツの融合した領域が求められる。
著者
平出 昌嗣 ヒラデ ショウジ Hirade Shoji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.249-253, 2014-03

この18世紀の小説は,小説が本来持つべき主題と秩序と統一という概念を故意に壊そうとした作品であり,遊びと笑いの精神に満ちている。主人公の人生はほとんど描かれず,描かれるものは主人公の周囲にいる父親や叔父ばかりである。またプロットも,時間を追い,因果律に従って展開するのではなく,語り手の気分によって自由かつ奔放に展開していく。連想法というのがその方法であり,主人公の物語を進めるふりをして,脱線につぐ脱線で,その脱線ぶりを楽しみ,本筋はほとんど進まないというのが,基本的なパターンになる。さらに語り手は聞き手を人格化し,紳士淑女にひんぱんに話し掛けては,おしゃべりを楽しむ。また白紙や黒塗りのページなどの視覚効果も繰り返し現れる。このように,この小説のおもしろさは小説の概念を大胆に破壊し,読者を翻弄するところにある。This eighteenth-century novel aims to destroy the idea of theme, order and unity which any novel should have as a work of art, and has the lively spirit of play and laughter. What is drawn is not the life of the protagonist, but those of his father and uncle. The plot is made, not on the basis of time and causality, but according to the mood of the narrator, so it goes along free and extravagant. The method is that of association of ideas, by which the story makes digression after digression under the pretense of progression. Furthermore, the narrator enjoys the casual conversation with ladies and gentlemen, the personified listeners of his story. He also makes an appeal to the eyes, providing a blank or a black page, or line drawings. In this way, this novel enjoys throwing readers into confusion caused by the destruction of the idea of a novel.
著者
井上 孝夫 イノウエ タカオ Inoue Takao
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.209-216, 2007-02

大学の原則は「自学自修」である。しかしこの原則は形骸化が著しい。特に100名単位の学生が受講する講義科目において,少なからぬ学生からは「楽して単位を修得する」ことが当然視され,講義はあたかも単位取得ゲームの競技場と化している。このような現状のもとで,わたしの行なった2006年度前期の「社会学概論」の講義では,受講学生に対して,「ノートの取り方」と「授業の流れ,およびテキストへの注意」に関する2つの「指導」を行ない,「自学自修」の原則を実質化していくためのささやかな第一歩とした。それによって,一定の成果をあげることができたと判断している。本稿は,その概要と分析である。
著者
松尾 七重 マツオ ナナエ Matsuo Nanae
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.21-28, 2007-02

本研究の目的は図形の定義についての検討場面を取り入れた授業により,図形の包摂関係についての生徒の理解が変容することを明らかにすることである。そのために,まず,図形の概念形成を促進することを目指し,定義の捉え方の指導を考えるという本研究の立場を明確にし,また,これまでの研究成果を踏まえ,定義指導の要因を示す。次に,その要因を考慮して実施された授業の概要,その授業前後で行われた図形の包摂関係についての理解に関する実態調査の概要及びその結果を述べ,その結果を考察する。その結果,長方形,平行四辺形及び二等辺三角形についてはより特殊な図形を含めて考えられるようになったことにより指導の効果が示された。しかしながら,定義を適切に捉えることができた生徒はある図形がそれより一般的な図形に含まれるかどうかの判断はできても,その判断を,概念イメージに当てはまる図を選ぶ際に用いていないことが明らかになった。The purpose of this study is to show the transition of students' understanding of inclusion relations between geometric figures through the lessons which adopt the situation of discussing about definitions of geometric figures. First it clarifies that teaching definitions of geometric figures promotes concept formation of these figures in this study. Second the factors of teaching definitions of geometric figures are pointed out based on the results of the previous studies. Third the lessons which adopt the situation of discussing about definitions of geometric figures were given and the survey of understanding of inclusion relations between geometric figures before and after the lessons administered and the results of the survey were considered. It follows from what has been said that the teaching definitions effects students' understanding of inclusion relations between squares and rectangles, rectangles or rhombi and parallelograms, regular triangles and isosceles, right isosceles and isosceles, however, students who understood the definitions of geometric figures appropriately was not able to use the inclusion relations in order to select figures that are consistent to their concept image of geometric figures.
著者
川島 亜紀子 カワシマ アキコ Kawashima Akiko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.185-191, 2013-03

夫婦間葛藤に関する心理学的研究は、我が国においては比較的新しい領域であり、多くの研究は欧米における研究で使用される尺度を使用するか、あるいは、それらを基に、日本版を作成することが多かった。そのため、我が国独自の葛藤のあり方について測定しきれていないのではないかという懸念があった。そこで、本研究では、我が国における夫婦間葛藤方略の実態について検討するため、インターネット上のサービスである、"Yahoo!知恵袋"に寄せられた情報を使用し、我が国の夫婦間葛藤の実態や、葛藤方略の実態について検討することを目的とした。その結果、大きな枠組みとしては、欧米での先行研究との違いは見いだされなかったが、攻撃性の表出方法や、譲歩のあり方において違いがみられる可能性が示された。今後、これらの結果を基に尺度を構成し、本結果が我が国の実態を反映しているのかどうかを検討することが求められる。