- 著者
-
児玉 忠
- 出版者
- 宮城教育大学教職大学院
- 雑誌
- 宮城教育大学教職大学院紀要 = Bulletin of Miyagi University of Education Graduate School for Teacher Training
- 巻号頁・発行日
- no.2, pp.3-10, 2021-03-31
全国学力・学習状況調査における「テキスト」と「情報」とに着目し、それが「PISA 型読解力」のどのような影響下にあるかを検討した。その結果、「PISA型読解力」は教材テキスト概念や読解力の概念を拡張させる点に影響を与えていることが確認できた。 まず「教材テキスト概念の拡張」についてである。「PISA型読解力」では、教材となる「テキスト」は文や段落から構成される「連続テキスト」と図表などの「非連続テキスト」からなることを示している。また、その影響を受けた全国学力・学習状況調査では、新聞を例とする社会生活に関わるさまざまな文章を「テキスト」としている。これによって、とりわけ国語科教育における教材テキスト概念は拡張され、学びに広がりが生まれることになった。 次に「読解力概念の拡張」である。これまでの読解力では、教材となる「テキスト」について、主として筆者の言わんとすることを正しく詳しく読み取ることに主眼がおかれてきた。しかし、「PISA型読解力」では、読み手が目的に応じて意図的・自覚的に「テキスト」に向き合い活用する能力を読解力とした。これによって、教材テキストについて「筆者(作者)の文脈」を正しく詳しく読み取るだけではなく、読み手である学習者が主体となって教材となる「テキスト」と向き合い、そこから得られた「情報」によって課題解決や目標達成に取り組む、いわば「学習者の文脈」を生み出す能力が読解力として位置付けられた。