著者
坂井 弘紀
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
no.21, pp.35-54, 2021-03-11

中央ユーラシアには、川や湖などに棲み、人間に悪事を働く超自然的存在がいる。「水の世界」は人間の世界とは異なる「異界」、もしくは「境界」を意味し、スー・アナスやジャルマウズ、アルバルストゥといった水辺の存在には、女性性や母性の特徴が強くみられる。母性に関連して、ジャルマウズやアルバストゥは、出産など人間の生にまつわる要素が強く、彼女らが本来は生命にまつわる母神的存在であったという仮説が浮かぶ。人間を苦しめ、命を奪う存在でありながら、反対に人間に善や利をもたらす存在でもあることは、彼女たちが生と死という対立的な両義性をもつことを示す。ジャルマウズとアルバストゥは形状や役割からみると、ロシアのバーバ・ヤガーと同類であり、また、シュルガンとロシアのシュリクンも水に関わるという点やその名称の類似性から深いつながりがあることが推定される。ユーラシア中央部には、言語や「民族」の枠組みを超えた文化的共生があったのである。

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“CiNii 論文 - 水辺の異形 : スー・アナス、ジャルマウズ、アルバストゥ、シュリクンについて” https://t.co/5r883ysnEs ※本文リンクあり

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