- 著者
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磯貝 富士男
- 雑誌
- 大東文化大学紀要. 人文科学 (ISSN:03861082)
- 巻号頁・発行日
- no.59, pp.85-104, 2021-02-28
岩殿観音の正法寺縁起・濫觴の説話にみられる観音信仰について考察した。その縁起は18世紀に創作されたものであること、かつて現世利益信仰としての性格が濃厚であった観音信仰が、現世だけでなく来世救済の阿弥陀信仰を吸収して現当二世の救いを説く流れの中に位置付けられること、さらにその特徴は観音を本地の阿弥陀如来が娑婆に示現したものと説く点にあり18世紀には秩父や坂東の札所に広まっていたこと、その系譜的源として室町期の阿弥陀・観音融合思想、中でも秩父三十三所で説かれていた教説との関係を重視すべきこと、等を指摘した。