著者
小長谷 有紀
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会 E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.34-42, 2007
被引用文献数
4 2

モンゴル牧畜システムは移動性が高いという特徴に加えて,多くのオスを維持し,多種の家畜を多角的に利用するという特徴を有しており,自然環境のみならず,社会環境にも適応的であった.それは単なる生存経済ではなく,軍事産業であり情報産業でもあった.20世紀になると社会主義的近代化のもとで脱軍事化すなわち畜産業化が進行した.市場経済へ移行してからは,牧畜に従事する人々すなわち遊牧民の間で地域格差と世帯格差が拡大している.今日,遊牧民たちは必ずしも自然環境だけではなく,むしろ社会環境に対して積極的に適応して移動している.

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"大量に生き残る去勢オス畜こそは,歴史上,大いに活躍した騎馬遊牧民の軍事力にほかならない.かつて世界で最速の乗り物であったウマも,…去勢オスを役畜として利用" →去勢オスとモンゴル帝国

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