著者
三上 岳彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.79-88, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
24
被引用文献数
9 4

日本の都市ヒートアイランド研究が大きく進展している.東京都心部の年平均気温は過去100年間に3°Cも上昇しており,地球平均気温の5倍の上昇率である.都市高温化の要因としては,第一に人工廃熱の増加による都市大気の直接加熱,第二に都市構造の変化,すなわち地表面の人工化や高層建造物の増加,緑地・水面の減少が挙げられる.最近行われた一連のプロジェクト研究から,都市内大規模緑地のクールアイランド効果や東京湾海風に及ぼす高層ビル群の影響,さらに高密度観測網による都内気温分布の日変化と海風による移流効果などが解明されつつある.今後のヒートアイランド問題の解明には,気候学をはじめ,気象学,建築・土木工学,医学,生態学など多くの分野における学際的な研究が不可欠である.
著者
鈴木 晃志郎 于 燕楠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<b>研究目的</b><br><br> 本発表は,地理学が得意とする空間的可視化の手法を用いて,富山県内の心霊スポットの分布が現代と100年前とでどう異なるかを空間解析し,その違いをもたらす要因について考察することを目的とする.本発表はエミックに扱われがちな事象をエティックに捉える試みであり,民俗学を中心に行われてきた妖怪変化の分類学を志向するものでもなければ,超常現象そのものの有無を論ずるオカルティズム的な関心も有しない.<br> 超常現象が何であるにせよ,それらが超常現象となり得るには,人目に触れ認知されなければならない.ゆえに超常現象は高度に文化的であり,その舞台として共有される心霊スポットは,組織化され商業化された一般的な娯楽からは逸脱した非日常体験を提供する「疎外された娯楽(Alienated leisure)」(McCannell 1976: 57)の1つとして社会の文化的機能のなかに組み込まれているとみなしうる.その機能に対して社会が与える価値づけや役割期待の反映として心霊スポットの布置を捉え,その時代変化を通じて霊的なものに対する社会の側の変容を観察することは,文化地理学的にも意義があると考えられる.<br><br><b>研究方法・分析対象</b><br><br> 2015年,桂書房から復刻された『越中怪談紀行』は,高岡新報社が1914(大正3)年に連載した「越中怪談」に,関係記事を加えたものである.県内の主要な怪談が新聞社によって連載記事として集められている上,復刻の際に桂書房の編集部によって当時の絵地図や旧版地形図を用いた位置情報の調査が加えられている.情報伝達手段の限られていた当時,恐らく最も網羅的な心霊スポットの情報源として,代表性があるものと判断した.この中から,位置情報の特定が困難なものを除いた49地点をジオリファレンスしてGISに取り込み,100年前グループとした.比較対象として,2018年12月にインターネット上で富山県の心霊スポットに関する記述を可能な限り収集し,個人的記述に過ぎないもの(社会で共有されているとは判断できないもの)を除いた57の心霊スポットを現代グループとした.次にGIS上でデュアル・カーネル密度推定(検索半径10km,出力セルサイズ300m)による解析を行い,二者の相対的な分布傾向の差異を可視化した.このほか,民俗学的な知見に基づきながら,それらの地点に出現する霊的事象(幽霊,妖怪など)をタイプ分けし,霊的事象と観察者の側とのコミュニケーションについても,相互作用の有無を分類した.<br><br><b>結 果</b><br><br> 心霊スポットの密度分布の差分を検討したところ,最も顕著な違いとして現れたのは,市街地からの心霊スポットの撤退であった.同様に,大正時代は多様であった霊的事象も,ほぼ幽霊(人間と同じ外形のもの)に画一化され,それら霊的事象との相互作用も減少していることが分かった.霊的なものの果たしていた機能が他に代替され,都市的生活の中から捨象されていった結果と考えられる.<br><br><b>文 献</b>:<br>MacCannell, D. 1976. <i>The Tourist: A new theory of the leisure class</i>. New York: Schocken Books.
著者
竹本 弘幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.783-804, 1998-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

片品川流域に発達する河岸段丘についてテフラ層序に基づき調査し,堆積物の分析を通じて火山活動の影響を明らかにした.片品川流域に発達する河岸段丘は,更新世中期の砥山面(To), 15~10万年前の沼田面(Nu),11~10万年前の追貝原面(Ok),6万年前の伊閑面(Ik),5万年前の平出面(Hi),3~1.5万年前の貝野瀬1~皿面(Ka-1~皿);1.3~1万年前の低位面(L)に分類される.砥山面(To),追貝原面(Ok)は,更新世中期に赤城山の火山活動によって多量の砂礫が供給された結果,形成された堆積段丘面群である沼田画(Nu)は,赤城山の活動によって形成された堆積段丘面で,約20万年前から最終間氷期を経て約10万年前まで存続した水域(古沼田湖)に形成されたと考えられる.古沼田湖の堆積物である沼田湖成層の層厚は最大約60mに及び,上流側では沼田礫層に層相変化する.沼田礫層は礫径が大きく,礫種構成において赤城山起源の礫が卓越する.これに対して,伊閑礫層以降には赤城山起源の礫の混入率が徐々に減少し,貝野瀬I礫層以降には30%以下となる.この傾向は赤城山の火山活動と調和的である.伊閑面は,最大層厚35mの砂礫からなる堆積段丘面である.本面の形成には,断ある程度火山活動の影響も認められるが,中部日本などに広く認められる気候性の堆積段丘面と同様の成因が想定される.粒径や礫種構成から判断して,現河床への赤城山の影響はほとんど認められない.
著者
二村 太郎 荒又 美陽 成瀬 厚 杉山 和明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.225-249, 2012-12-31 (Released:2013-01-31)
参考文献数
67
被引用文献数
1

生理学・生物地理学の研究者であるジャレド・ダイアモンドが1997年に上梓したノンフィクション『銃・病原菌・鉄』は,一般書として英語圏で幅広い読者を獲得し,2000年に刊行された日本語版も売れ行きを大きく伸ばしていった.地理的条件の違いがヨーロッパ(ユーラシア)の社会経済的発展を優位にしたと主張する本書については,そのわかりやすさとダイナミックな内容ゆえに多くの書評が発表された.しかしながら,本書は英語圏では地理学者をはじめ学術界から数々の強い批判を受けてきたのに対し,日本では多方面から称賛されており,また地理学者による発信は皆無に近い.本稿は主に書評の検討を通して英語圏と日本における本書の受容過程を精査し,その差異と背景について明らかにする.また,これらの検討を通じて本稿では,諸外国からの地理学的研究成果の積極的な導入が必要であるとともに,より批判的な視点が求められることを論じていく.
著者
阿部 一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.265-279, 1991-04-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
18

Changes in architecture reflect interactions among social groups, each of which seems to have a certain “meaning matrix” that is the implicit knowledge required for understanding the meaning of things. Disagreements over meaning matrices occasionally bring about laws regulating the style of architecture. In this paper, the author examines the relation between law and the architecture of Japanese “lovers' inns, ” which are inns with eye-catching facades and screened entrances, catering to couples for short-time or overnight stays, from the viewpoint of the interaction of two social groups; the owners of these inns and local residents. 1) The historical changes in lovers' inns architecture are as follows: 1950s: Inns displaying hot spring symbols were located in city centers. 1960s-early 1970s: Western-style architecture appeared, and “gorgeous” motels imitating Western castles or cruisers proliferated along suburban highways. Late 1970s-1980s: The appearance of love-hotels (lovers' inns located on urban streets) has become “subdued.” 2) The owners and planners of lovers' inns have had a tendency to use striking decor in order to attract people's attention. 3) Local residents have a desire to conceal things concerning sex, which results in demands for a “subdued” appearance and the exclusion of lovers' inns from residential areas. 4) Reflecting the viewpoint of local residents, regulations covering the appearance, the inside structure, and the location of lovers' inns have been established. 5) The relation between law, architecture, and meaning matrices is shown in Fig. 4. Owners and planners build the inns. Local residents perceive the inns' appearance through their own meaning matrix. When the architecture is not acceptable to the local residents, laws are established, which are implicitly recognized by them. The owners understand the laws and change the style of architecture.
著者
碓井 照子 小長谷 一之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.621-633, 1995-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
6
被引用文献数
2 4

Many studies are being conducted on the 1995 Hanshin-Awaji Earthquake from the earth science and architectural technological aspects, but urban structure is an important intervening factor link-ing causes and damages of an urban earthquake. This note will give a few insights from this point of view. The distribution of debris of collapsed structure clustered around (1) Suma-Nagata district, (2) Sanno-miya-Yamate district and (3) Nada-Higashinada district was analyzed; (1) and (3) are inner-city areas with many wooden houses, located 3 to 10 km from the central business district. Some network analyses are further performed usig GIS in the district of cluster (3). The number of arcs within a given road distance shows a characteristic decay caused by the earthquake, but its pat-tern varies by the distance band given. The fractal dimension of road network effectively summa-rizes this information. Calculation of the fractal dimension extracts many points either restricted by transportation facilities or river lines, or enclosed by debris as “dead ends”.
著者
二村 太郎 荒又 美陽 成瀬 厚 杉山 和明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.225-249, 2012

生理学・生物地理学の研究者であるジャレド・ダイアモンドが1997年に上梓したノンフィクション『銃・病原菌・鉄』は,一般書として英語圏で幅広い読者を獲得し,2000年に刊行された日本語版も売れ行きを大きく伸ばしていった.地理的条件の違いがヨーロッパ(ユーラシア)の社会経済的発展を優位にしたと主張する本書については,そのわかりやすさとダイナミックな内容ゆえに多くの書評が発表された.しかしながら,本書は英語圏では地理学者をはじめ学術界から数々の強い批判を受けてきたのに対し,日本では多方面から称賛されており,また地理学者による発信は皆無に近い.本稿は主に書評の検討を通して英語圏と日本における本書の受容過程を精査し,その差異と背景について明らかにする.また,これらの検討を通じて本稿では,諸外国からの地理学的研究成果の積極的な導入が必要であるとともに,より批判的な視点が求められることを論じていく.
著者
埴淵 知哉 川口 慎介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.137-155, 2020 (Released:2020-04-04)
参考文献数
14

近年,学術研究団体(学会)における会員数の減少が懸念されている.本稿では,日本学術会議が指定する協力学術研究団体を対象として,日本の学会組織の現状および変化を定量的に俯瞰することを試みた.集計の結果,学会のおよそ3分の2は会員数1,000人未満であり,人文社会系を中心に小規模な学会が多数を占める現状が示された.過去10年余りの間に個人会員数が減少した学会は3分の2にのぼるものの,それは理工系,中小規模,歴史の長い学会で顕著であり,医学系や大規模学会ではむしろ会員数を増加させていた.また,学会の新設に対して,解散は少数にとどまっていた.結果として,既存学会の維持および会員数の選択的な増減,そして新設学会の増加が交錯している状況が示された.そして,地理学関連学会は学術界全体の平均以上に会員減少が進んでおり,連合体や地方学会を含めてそのあり方を検討する必要性が指摘された.
著者
鈴木 晃志郎 于 燕楠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2019 (Released:2019-03-30)

研究目的 本発表は,地理学が得意とする空間的可視化の手法を用いて,富山県内の心霊スポットの分布が現代と100年前とでどう異なるかを空間解析し,その違いをもたらす要因について考察することを目的とする.本発表はエミックに扱われがちな事象をエティックに捉える試みであり,民俗学を中心に行われてきた妖怪変化の分類学を志向するものでもなければ,超常現象そのものの有無を論ずるオカルティズム的な関心も有しない. 超常現象が何であるにせよ,それらが超常現象となり得るには,人目に触れ認知されなければならない.ゆえに超常現象は高度に文化的であり,その舞台として共有される心霊スポットは,組織化され商業化された一般的な娯楽からは逸脱した非日常体験を提供する「疎外された娯楽(Alienated leisure)」(McCannell 1976: 57)の1つとして社会の文化的機能のなかに組み込まれているとみなしうる.その機能に対して社会が与える価値づけや役割期待の反映として心霊スポットの布置を捉え,その時代変化を通じて霊的なものに対する社会の側の変容を観察することは,文化地理学的にも意義があると考えられる.研究方法・分析対象 2015年,桂書房から復刻された『越中怪談紀行』は,高岡新報社が1914(大正3)年に連載した「越中怪談」に,関係記事を加えたものである.県内の主要な怪談が新聞社によって連載記事として集められている上,復刻の際に桂書房の編集部によって当時の絵地図や旧版地形図を用いた位置情報の調査が加えられている.情報伝達手段の限られていた当時,恐らく最も網羅的な心霊スポットの情報源として,代表性があるものと判断した.この中から,位置情報の特定が困難なものを除いた49地点をジオリファレンスしてGISに取り込み,100年前グループとした.比較対象として,2018年12月にインターネット上で富山県の心霊スポットに関する記述を可能な限り収集し,個人的記述に過ぎないもの(社会で共有されているとは判断できないもの)を除いた57の心霊スポットを現代グループとした.次にGIS上でデュアル・カーネル密度推定(検索半径10km,出力セルサイズ300m)による解析を行い,二者の相対的な分布傾向の差異を可視化した.このほか,民俗学的な知見に基づきながら,それらの地点に出現する霊的事象(幽霊,妖怪など)をタイプ分けし,霊的事象と観察者の側とのコミュニケーションについても,相互作用の有無を分類した.結 果 心霊スポットの密度分布の差分を検討したところ,最も顕著な違いとして現れたのは,市街地からの心霊スポットの撤退であった.同様に,大正時代は多様であった霊的事象も,ほぼ幽霊(人間と同じ外形のもの)に画一化され,それら霊的事象との相互作用も減少していることが分かった.霊的なものの果たしていた機能が他に代替され,都市的生活の中から捨象されていった結果と考えられる.文 献:MacCannell, D. 1976. The Tourist: A new theory of the leisure class. New York: Schocken Books.
著者
山本 政一郎 尾方 隆幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.68-83, 2018 (Released:2018-03-16)
参考文献数
44

高等学校の地理教育,地学教育で共通する自然地理学,地球物理学,地質学に関連する項目の用語や説明について,2017年度に使用されている「地理A」「地理B」「科学と人間生活」「地学基礎」「地学」の全ての教科書で比較検討した.その結果,地理教育,地学教育それぞれの中でも,両者の間でも異なる用語が多いことが分かった.また,学術用語と教育用語とに齟齬がある場合もみられた.今後は,現在の科学界の知見を高校教育に反映させて,よりふさわしい用語や説明を検討・採用していく必要がある.
著者
益田 理広
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.363-385, 2015-07-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
88

地理学はしばしば「空間の学」と称される.これは斯学が空間なる概念を根本対象あるいは方法,すなわち理論上の基礎として遇していることを意味するが,その重用とは裏腹に,現今の地理学的空間は確乎たる意義を失し,ただその名のみが無数の概念を覆う事態に陥っている.本研究は,この空間概念の混乱という理論上の危機を打開すべく,事物の本質的な結果のみを重んじるプラグマティズムに範を取り,演繹法を用いた分析によって地理学的空間概念の一般的性格を見出した.その際には,空間に関する古典論から基本的な4類型を示し,中でも地理学理論に深く関係する3類型を分析した.結果,地理学においては空間を物質そのものとみなす傾向が甚だ強く,加えてそれらの大半が可視的な性質を伴っていることが理解された.さらに,この一般的性格が,空間論の興隆と同時期に衰微したラントシャフト概念と共通する特徴をもつ,一種の後継概念と目される点についても指摘した.
著者
森 岳人
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.170-183, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
114

本稿は地理学のアウトリーチについて,出版や書店という側面から検討したものである.主に書店の販売データを用いて,一般向け地理学関連書籍が書店や読者にどのように受け入れられているかを調査した.その結果,地理関連書籍は,歴史分野などと比べると発行点数も売上も少なく,読者も中高年の男性に偏っていることがわかった.また,意識的に地理コーナーを設置している書店も少なく,適切に販売する条件が整っていないことが明らかとなった.本稿によって,地理学が世間でどの程度関心をもたれているのか,またどれだけ世間に浸透しているかについて,推測することができる.
著者
牛垣 雄矢 木谷 隆太郎 内藤 亮
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.85-97, 2016 (Released:2016-06-23)
参考文献数
28

本研究は,東京都千代田区秋葉原地区を対象に,2006年と2013年に行った現地調査結果を基に,商業集積の特徴と変化を考察した.同地区ではメイド系店舗が集積し,飲食・サービス業化が進んでいる.アイドル関係の小売店や劇場も増加し,アニメ女性から実在する女性を嗜好する消費者へとターゲットが移りつつある.家電業界における企業再編の影響を受け,秋葉原駅付近の表通りでは戦前・戦後直後に開業した店舗が閉店して娯楽・飲食系のチェーン店が進出し,商業空間の均質化が進んでいる.街の飲食・サービス業化や街と関係性の薄い業種の店舗が集積したことで,消費者の関連購買行動が弱まり,商業集積地としての強みも減じている.一方,雑居ビルで構成される裏通りでは,メイド系店舗が多数入居して特徴のある空間を維持している.その雑居ビルでも残存・成長できる店舗は少なく,少女アニメ関係やメイド系店舗は激しく入れ替わる形でその集積を維持している.
著者
高阪 宏行
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.483-497_2, 2000-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
30
被引用文献数
1

日本でも多くの活火山に対し火山災害予測図が作成されてきたが,この地図は火山災害の物理的状況を表すだけで,地域社会に与える被害を予測するものではない.火山災害予測図を基礎資料として,人口分布,道路・農地・公共施設などとの位置関係を探ることによって,初めて被害が予測できるのである.本研究は,浅間山の南斜面に発生する火砕流を事例として,GISを利用した防災計画支援システムを構築した.このシステムでは,火山災害予測図をもとに火砕流の流動範囲を噴火後5分以内,5分~10分,10分~15分,15分~30分に色分けして表示するとともに,火砕流のレイヤーと人口分布,道路,鉄道・高速道路,あるいは・学校・病院・ホテルなどのレイヤーとを重ね合わせることで,二っの分布の共通部分から被害予測図を作成した. 被害予測図を用いて被害を予測した結果,被災面積は2,529ha, 人的被害は約3,500人に及ぶことが明らかとなった.また,道路の被災区間は,約1.9kmの国道を含む34.5kmに及び,鉄道や高速道路にも10分~15分で火砕流が到達することが予測された.さらに,防災計画支援システムを利用レて,火砕流が覆う地区をリスク1の地区,その地区周辺で火災が延焼する可能性のある地区を500mバッファのリスク2の地区とし,火砕流に対する緊急計画地域として設定した.また,火砕流からの脱出計画,避難所の設置,避難民の収容計画,救援計画を考察した.
著者
河本 大地
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.50-60, 2014-03-31 (Released:2014-04-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

ジオパークに関わる動きが活発化している.その中で日本においては,多くのジオパーク,およびそれを目指す地域で,地方自治体が主導する形がとられている.そこで本稿では,行政主導型のジオパークマネジメントの先例として,ピレネー山脈のスペイン側にあるソブラルベジオパークをとりあげ,意義と課題を整理した.その結果,地質・地形等に関わる施策を展開しやすくなったこと,学校教育との連携などが行政主導型マネジメントの意義として,見いだされた.他方,ジオパークに関する民間の主体的活動はほとんど見られず,またジオパークとしての取り組みが地質・地形関係に特化するなど行政の縦割りの弊害も存在する.しかし,域内企業とのパートナーシップ協定やマウンテンバイク用ルートの整備等,地質・地形への関心喚起や地域資源活用の手法は,日本のジオパークにとって参考になると考えられる.
著者
鈴木 晃志郎 于 燕楠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.55-73, 2020 (Released:2020-02-22)
参考文献数
134

今日の地理学において,幽霊や妖怪を含む怪異は,専ら民俗学的な手法に依拠して検討されている.しかし隣接分野では,定量的な手法に基づいた知見が数多く存在し,客観性と厳密性を確保することによって学術的信頼性を高める試みが多くなされている.そこで本研究は富山県を対象とし,今からおよそ100年前(大正時代)の地元紙に連載された怪異譚と,ウェブ上に書き込まれた現代の怪異に関するうわさを内容分析し,(1) 怪異を類型化して出現頻度の有意差検定を行うとともに,(2) カーネル推定(検索半径8 km,出力セルサイズ300 m)とラスタ演算による差分の算出により,怪異の出没地点の時代変化を解析した.その結果,現代の怪異は大正時代に比して種類が画一化され,可視性が失われ,生活圏から離れた山間部に退いていることが示された.
著者
佐藤 廉也
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.159, 2019 (Released:2019-03-30)

報告者はかつて、2011年当時に全国で使用されていた高校地理A・B教科書(6社14冊)の中に見られる焼畑に関する全記述を拾い上げて整理検討した(佐藤 2016)。その結果、ほぼ全ての教科書の記述に誤りや偏見が見られることを指摘した。その後2016年には教科書改訂が行われたが、現在も多くの教科書では誤った記述内容はいっこうに改善されることなく、ほぼ踏襲されたままである。焼畑に対する誤解と偏見の歴史は古く、1950年代には既にH.C.Conklinの古典的な研究によって指摘されているが、とりわけ地球環境問題の文脈において焼畑が注目を浴びた1980年代以降、2010年代に至るまでの間に、焼畑の持続性に関する膨大な事例研究が蓄積されている。特に1990年代後半以降には、焼畑休閑期間と土壌養分や収量との関係に関する実証的な研究が複数現れており、その結果、焼畑が熱帯破壊の主因であるというかつて根拠のないまま流布していた主張はほぼ否定されるに至っている。要するに、研究の蓄積によって得られた知見と、教科書やメディアによって垂れ流され続ける誤った情報との間のギャップは埋まるどころかむしろ広がる一方なのが現状である。 メディアや教科書の焼畑記述に見られる誤りや偏見を大きく4つのパターンに分けると、(1)常畑耕地造成のための火入れ地拵えを焼畑と混同する誤り(2)焼畑を「原始的農耕」などと記述する偏見(3)熱帯林減少の主因が焼畑であるとする誤り(4)伝統的な焼畑は持続的だが、人口増加に伴って休閑期間が短縮され、結果として土地の不毛化を引き起こすという根拠のない「失楽園物語」、となる。(1)は最も低レベルの誤りであるが、種々のメディアではこの種の誤りが後を絶たない。(2)〜(4)が現在の高校教科書に見られる誤りである。(3)に関しては、熱帯林減少の主要因を地域別に検証したGeist et al. (2002)や、焼畑変容の要因を地域別に整理したVan Vliet et. al. (2012)ほかいくつかのレビュー論文が現れ、その結果、熱帯林減少は主として商品作物栽培を目的とした常畑農地の拡大や、道路建設と並行して進む木材伐採やパルプ材生産を目的とする植林地造成などによって進み、焼畑が熱帯林減少の要因となるケースは稀であることが明らかになっている。一方、(4)は最も根が深い誤りであると言え、地理学者の間ですら誤解が見られる。「人口増加→休閑の短縮化→土地の不毛化」という、未検証の仮説が前提となっているものであるが、2000年以降に発表されたいくつかの論文は、この前提とは逆に、休閑期間と焼畑収量の間にはほとんど相関が見られないという結果を示している(Mertz et al 2008)。 本発表では、上に述べた「誤記述のパターン」がなぜ間違いなのかを、先行研究を引きながら簡潔に説明するとともに、現行教科書の記述を具体的に挙げながら、それらの記述の何が問題なのかを詳細に検討し、誤りを正すにはどうすれば良いのかを検討する。なお、報告者は高校地理B教科書の採択率が最も高い教科書会社に、記述の誤りを指摘する質問状を送ったが、2ヶ月経った現在回答はない。報告当日までに何らかの回答があった場合にはその内容も紹介したい。
著者
研川 英征 後藤 雅彦 大角 光司 栗栖 悠貴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.132, 2020 (Released:2020-03-30)

1.はじめに自然災害伝承碑は,過去に発生した自然災害の教訓を後世に伝えようと先人たちが残した恒久的な石碑やモニュメントで,「過去に発生した自然災害に関する発生年月日,災害の種類や範囲,被害の内容や規模」が記載されたものである.国土地理院では,「自然災害伝承碑」の情報を,ウェブ地図「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)に令和元年6月19日から掲載を開始した.令和2年1月15日現在で,自然災害伝承碑の公開数は, 45都道府県139市区町村の416基である.公開した自然災害伝承碑の情報は,防災教育をはじめとする地域の防災力を高めるための様々な用途に活用可能である.そこで,自然災害伝承碑の公開に関するこれまでの経緯のほか,地形特性情報との重ね合わせにより本取組の意義について報告する.2.経緯近年激甚化・頻発化する自然災害に備えるためには,土地の成り立ちを知り,地域の災害に対する危険性を理解することが重要となる.たとえば低地の微地形は,河川の氾濫等の積み重ねで形成されていることを知れば,その土地では浸水のリスクがあることが理解できる.国土地理院では,このような地形特性情報の整備と提供をおこなってきたが,地形等の情報だけでは,十分に伝わりにくいという課題があった.そのため,国土地理院では,地形特性情報だけでなく,その地域で実際に起こった災害そのものの情報を伝える自然災害伝承碑を災害履歴情報として分かりやすく提供し始めた.自然災害伝承碑の情報を伝えることで,身近な災害への理解を深め,土地の成り立ちの理解促進による地域防災力向上への貢献を目指している.3.地形特性情報との重ね合わせ地理院地図上で,自然災害伝承碑を治水地形分類図や標高情報と重ねると,実際にどのような場所で,どのような災害が起こっていたのかを知ることが出来る.たとえば堤防の決壊が発生したことを伝承している場所について,治水地形分類図と自然災害伝承碑を重ね合わせることで,自然災害伝承碑が旧河道に隣接する微高地上に建立されていることや,自分で作る色別標高図及び陰影起伏図を重ね合わせることで,自然災害伝承碑が建立されている土地は,周囲よりも低い土地であることが読み取れた.自然災害伝承碑の情報を通して,当該箇所の災害履歴が分かるとともに,地形特性情報の意味を実感することが可能となる.4.まとめ地形特性情報に,地域の方々によって伝承されている災害履歴情報である自然災害伝承碑を組みあわせることで,具体的にそこで起こった災害の背景を知ることができ,災害をより身近に感じられるきっかけとなる可能性がある.
著者
栗栖 悠貴 後藤 雅彦 田口 綾子 研川 英征
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2020 (Released:2020-03-30)

近年激甚化・頻発化する自然災害に備えるためには,地域の災害に対する危険性を我が事として理解しておくことが重要である.国土地理院では,従来から土地の成り立ちに関する情報(地形特性情報等)を通して地域の危険性について発信してきた.しかし,これらは地形分類など専門性が高く,危険性を実感しにくいため,十分に伝わりにくいという課題があった.そこで,国土地理院は,防災意識を高め,地域全体の防災力を底上げするためには防災教育・地理教育が重要であるとの認識にたち,教育現場で活用可能なわかりやすいコンテンツの整備に取り組んでいる.その中で,令和元年6月19日より国土地理院のウェブ地図「地理院地図」(https://maps.gsi.go.jp/)に自然災害伝承碑の掲載を開始した.自然災害伝承碑には災害の様相や被害の状況などが記載されているため,地域に暮らす住民が災害の危険性を身近に感じやすい有力なツールになる.しかし,現在の教育現場では,教材の研究,作成をする時間が少ないことが原因で,有用な情報であってもすぐ使える形になっていないと活用されない傾向がある.そのため,自然災害伝承碑も授業ですぐに使えるコンテンツとして提供する必要がある.本報告では,「地理教育の道具箱」(https://www.gsi.go.jp/CHIRIRIKYOUIKU/index.html)に掲載しているコンテンツを例に自然災害伝承碑を活用した防災・地理教育支援について紹介する.
著者
岩田 修二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.153-164, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

高等学校地理教科書の世界の大地形の記述に使われている用語や説明の一部は不適当である.造山帯・安定陸塊の概念は地質構造を説明するものである.したがって,世界の山岳地域の大地形の説明として新期造山帯・古期造山帯を用いるのは止める.それに替えて地形の説明は平面形・高さ・傾斜などの地形の指標でおこなう.プレート論と整合するように変動帯を正しく説明する.造山帯・安定陸塊(楯状地・卓状地)の概念は鉱物資源の説明のためには有効である.ただし,地質学の概念であることをきちんと説明すべきである.このように教科書を改訂するためには,まず大学教員が努力しなければならない.高校教科書の「世界の大地形」の改訂案が付属資料として添付してある.