著者
内藤 準
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.155-175, 2009

リベラリズムの制度的秩序の基礎である「自由と責任のルール」は,われわれの社会的世界を構成する日常言語に組み込まれている.そのルールに依拠するわれわれの社会は,いかなる秩序のあり方を示すのか.本稿ではまず,リベラル・パラドクスの枠組みを応用して,自由と責任のルールおよび契約の自由からなる制度が,相互行為を規範的に秩序づける仕組みをまとめる.そのうえで,(1)リベラリズムに立脚する「近代市民社会の秩序」の基本的性格を検討する.そして,(2)貧困や格差の文脈における自由と責任のルールの意味と,いわゆる「自己責任論」の問題点を,社会の規範的な秩序形成という観点から,全国調査データの知見もふまえて検討する.分析の結果,(1)近代市民社会の秩序は人びとの十分な自由を前提とすること,その秩序は排除的な性格を持つことが明らかになる.さらに,(2)社会の規範的な秩序形成という観点からみると,拡大する貧困や格差の文脈において自己責任を理由に弱者支援や再分配政策を拒絶することが,むしろ秩序の基礎である自由と責任のルールそのものを掘り崩す可能性があることが分かる.

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自己責任論の限界について丁寧に解説してくださっています。 https://t.co/AZgRYMfQHO

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