- 著者
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谷田 創
齋藤 拓
田中 智夫
- 出版者
- 公益社団法人 日本畜産学会
- 雑誌
- 日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.2, pp.148-156, 1992
繁殖豚の家族群飼管理モデル(ファミリーペンシステム)の有用性を検討することを目的とし,今回はこのシステムにおける子豚の吸乳行動について2つの実験を行なった.ファミリーペンを形成するにあたって,まず種雄豚2頭と繁殖雌豚7頭を群飼した.成豚への飼料給与は,コンピュタ自動給餌機を用いて個体別に行なった.実験1: 成豚,離乳後の子豚(離乳子豚),離乳前の子豚(哺乳子豚)からなるファミリー群を構成した.その結果,離乳子豚は,妊娠後期の雌豚に対して定期的に吸乳行動を起こし,この雌豚は分娩前に乳汁を分泌するようになり,その後,6頭の子豚を分娩したが,そのうち5頭は栄養不良により衰弱死した.また,離乳子豚が,哺乳子豚の吸乳行動とその母豚の授乳行動のサイクルに同期して,乳を盗むことが観察され,離乳した子豚をファミリーペンの中で継続して飼育することは,妊娠中の雌豚に悪影響を及ぼすだけでなく,哺乳子豚の吸乳行動をも阻害することが認められた.実験2: 実験1のシステムを改善し,離乳子豚を含めずに,成豚と,出生時期の近い異腹子豚だけからなるファミリー群を構成した.その結果,母豚の授乳行動には同期性が認められ,子豚の吸乳行動が各母豚に分散したため,1頭の母豚に集中することはなかった.また,妊娠中の雌豚に対して子豚が吸乳行動を起こすこともなかった.群内の繁殖雌豚の分娩時期をそろえ,離乳時に子豚を群れから隔離することにより,妊娠雌豚に対する吸乳行動を防止するとともに乳の盗み飲みも無くし,行動の自由を与えられた成豚と子豚を一つの群れとして総合的に管理することができた.今回の調査結果から,従来のストール飼育に代わる繁殖雌豚の管理法としてファミリーペンの実用化の可能性が示唆された.