著者
植竹 勝治 山田 佐代子 金子 一幸 藤森 亘 佐藤 礼一郎 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-5, 2014

都市部住宅地に生息するノラネコの健康状態および繁殖状況を確かめるため、我が国の代表的な大都市のひとつである横浜市の住宅地において疫学調査を実施した。調査では、繁殖データ(雌306匹)の収集と生化学および感染症に関する血液検査(雄雌計31匹)を行った。調査対象のネコは全て捕獲-不妊去勢-復帰プログラムの対象個体であった。不妊手術時に妊娠していた雌ネコの割合は4月に最高値(58.6%)を示し、3月から7月にかけて比較的高値を示した。平均一腹産子数(±標準偏差)は3.8±0.5匹であった。血液検査において対象個体の何頭かは基準値外の値を示したが、猫白血病および猫免疫不全の両ウイルス感染症は全頭陰性であった。これらの結果から、横浜市の住宅地におけるノラネコの血液性状および繁殖状況は、健康な家庭ネコに比較して、概ね良好であった。このことは、不妊去勢手術に基づくいわゆる「地域猫」活動を推進する上で参考になる。
著者
植竹 勝治 中谷 治奈 増田 尚子 吉田 善廣 江口 祐輔 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17/18, pp.191-193, 2009-03-31

γ-アミノ酪酸 (GABA) の経口投与が肉用牛の長距離輸送および出荷・屠畜時のストレスを低減するかどうかを調べた。試験1では,対照区の去勢牛4頭に20mLの蒸留水を,処理区の去勢牛4頭に体重当たり10mgのGABA粉末を20mLの蒸留水に溶解した水溶液を,それぞれ130.1kmの陸路輸送直前に経口投与した。分散分析の結果,供試牛の唾液中コルチゾール濃度に対する処理と輸送経過時間との交互作用は,経過時間が60分までは有意 (P<0.05) であったが,120分以降については有意ではなくなった。試験2では,肥育牛20頭を5頭ずつ4処理区に分け,屠畜場への輸送前と翌朝の屠畜直前に,G区には13gのGABA粉末を100mLの蒸留水に溶解した水溶液を,S区には100mLの生理食塩水を,SG区には輸送前に生理食塩水と屠畜直前にGABA溶液を,それぞれ経口投与した。C区には輸送前も屠畜直前にも何も投与しなかった。多重比較検定の結果,いずれの処理区のウシの血漿コルチゾール濃度も,C区のウシよりも有意に低かった (全てP<0.01)。血漿アドレナリン濃度も,C区に比べ,S区のウシで有意に低く (P<0.05),G区のウシで低い傾向 (P<0.10) がみられた。これらの結果から,GABAの経口投与は,肉用牛の輸送および屠畜時のストレスを投与後数十分間は低減させることが確認された。
著者
石渡 俊江 植竹 勝治 安部 直重 江口 祐輔 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.149-154, 2005-02-01
被引用文献数
2

環境エンリッチメントレベルが異なる飼育ペンでの牛の舐塩行動の発現についで調査するため、黒毛和種×ホルスタイン種の去勢雄牛を2回の反復実験において合計71頭(n=35,36)を供試した。供試牛は導入2週間後から、濃厚飼料を給飼する給飼通路と乾草を給飼する飼槽、水槽、休息場所からなる通常のペンの対照群(C群:n=11,12)、通常のペンに乾草が入るように改良したドラム缶(Φ58価×H90cm)を設置したドラム缶群(D群:n=12.12)、そのドラム缶の側面に人工芝(30×120cm)を巻き付けた身繕いドラム缶群(GD群:n=12,12)に分け、3つのペン(各ペン6.0×9.5m)で飼育した。固形塩(5kg)は導入後4.5ヵ月目から給飼通路に設置し、その後、朝夕の給飼後2時間に10分間隔で3日間連続して行動観察し、採血と体重測定を合わせて行なった。観察期間中に舐塩行動が観察された牛は、対照群16頭、ドラム缶群10頭、身繕いドラム缶群11頭と処理群間に差はみられなかった。観察された舐塩行動の持続時間は、ほとんどが20分未満であった。舐塩行動の前に発現した主な行動は、乾草の採食(25.9%)、休息(22.4%)であり、後に発現した主な行動は休息(28.3%)、乾草の採食(21.7%)であった。舐塩回数の多い個体ほど、休息回数(r=0.25,P<0.05)と反側回数(r=0.28,P<0.05)が多くなった。また、舐塩回数の多い個体ほど、血清インスリン濃度が高くなった(r=0.41,P<0.05)。さらに一度でも舐塩行動を発現した個体で、未発現の個体より血漿グルコース濃度が低くなった(P<0.05)。以上の結果から、固形塩を舐めることは、いずれの環境エンリッチメントレベルにおいても必ず何頭かの牛で発現し、休息や反側行動の発現とインスリン分泌を促し、消化・代謝を促進する可能性があることが示唆された。
著者
石川 圭介 江口 祐輔 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.J594-J604, 2001-10-25
被引用文献数
1

本研究では,イノシシへの嫌悪刺激としてイヌを利用することが有効か否かを検証するため,イヌとイノシシの対面テストを行った.供試犬には1頭の警察犬と4頭の家庭犬を用い,供試猪には10ヵ月間飼育管理された約16カ月齢の個体6頭を用いた.対面は供試犬および供試猪を実験施設に馴致した後,1日3回,8:00~9:00,12:00~13:00,16:00~17:00の時間帯に行い,各供試犬を2日間で6頭すべての供試猪に対面させた,供試犬は供試猪との対面が始まると,対面前と比較して有意に供試猪の方に視線を向け(P<0.01),供試猪に向かって吠えて(P<0.05),警戒を示した.また,吠えの頻度には個体によって差がみられた(P<0.01).供試犬の供試猪に対する注視と吠えは,供試猪が走って逃げる直前の3秒に有意に多くみられ(それぞれ,P<0.05,P<0.01),この二つの行動が供試猪にとって嫌悪刺激となっていることが示唆された.本研究の結果,イノシシに対して回避反応を引き起こさせるイヌの行動は,視線を対象に向ける,対象に向かって発声するなどであったが,これらの行動はイヌによって個体差が大きかった.このことから,イヌをイノシシに対する嫌悪刺激として効果的に用いるためには,それに適したイヌの行動を見極め,行動に基づいて個体を選択する必要があると考えられた.
著者
吉本 正 谷田 創 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989 (Released:1989-04-01)

研究者らは1985年以来,暑熱環境における雄豚のサマ-ステリリティについて検討を行ない,30〜35^。Cの環境温度において3〜6週間飼養すると明らかに造精機能が低下することを認めた.現在は,その造精機能の低下防止について検討を行なっており,平成元年からは当補助金を受け,局所冷却による造精機能の低下防止法について検討を行っている.初年度は,自然環境下において局所冷却(豚の首〜肩部に水滴を落下させる drip cooling法)を行ない,その効果をサ-モグラフィ-を用いて生理反応の面から検討した.その結果,自然環境温(29〜31^。C)の条件下においては,局所冷却を行なうことによって豚体の皮膚表面温を2〜3^。C抑制する効果が認められた.2年度は環境調節室を用い,適温期(24^。C一定)を3日間,加温期(33^。C,10h;28^。C,14h)を4週間とし,大ヨ-クシャ-種雄豚6頭を用いて,同様の調査を行なった。実験1では,水滴の落下位置を検討するために,33^。Cの室温において,頭部,頸部,精巣部に水滴を11分ごとに1分間,滴下させて,それが全身の皮膚温に及ぼす影響を調査した.その結果,頸部に水滴を落下させた場合に全身の皮膚温を低下させる効果が認められた.実験2では,実験1の結果を基に,頸部に水滴を落下させた場合における適温期および加温期(33^。時)の心拍,呼吸,直腸温,サ-モグラフィ-による皮膚温および精液性状を調査した.その結果,心拍数および呼吸数に対しては大きな影響を与えなかったが,直腸温および皮膚表面温については約1^。C上昇を抑える効果が認められた.以上のことから,drip coolingによる局所冷却は,雄豚のサマ-ステリリティ-の方止に十分,活用できる方法であることが示唆された.
著者
福澤 めぐみ 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.176-184, 2008
参考文献数
14

イヌの訓練は、提示されたコマンドに対するイヌの行動が関連づけられていなければならないが、訓練に用いるイヌのコマンド認知に関する研究は少ない。本研究では、ヒトの言葉に対するイヌの反応について行動学的観点から探求することを目的とし、聴覚刺激として提示するため通常のコマンド提示に伴う視覚刺激などの非言語シグナルを排除した言語シグナルのみのコマンド「フセ」、「マテ」、「コイ」の提示に対する反応について、訓練開始1ヶ月前後の主にジャーマン・シェパード・ドッグを対象として調査した。各コマンドに施した刺激提示条件間においては、機械からコマンドを提示する条件に対するイヌの反応スコアは、訓練士がコマンドを直接提示する「Normal-TT」や実験者がコマンドを直接提示する「Normal-EE」条件に比べて低い傾向にあった。これは、訓練初期段階のイヌがビトからコマンドを直接提示されることに強く依存していることを示唆している。また、イヌは録音したコマンドを機械提示する刺激提示条件において、それらに対して正しい反応を示した。しかし、訓練初期段階のイヌのコマンドに対する反応は、ヒトが一方的にコマンドを提示するような機械提示の訓練よりも、直接コマンドを提示する方法を用いたほうが正しく導き出せると考えられる。
著者
田中 智夫 村山 有美 江口 祐輔 吉本 正
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.260-266, 1998-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

本研究は,ブタの視力について,ヒトにおける視力検査の基準を用いて検討した.6頭の育成豚(雌4頭,去勢2頭)を供試し,試視力用のランドルト環と,その切れ目をなくした円図形とを用い,それぞれ負および正刺激として飼料と連合学習させた.二者択一式のY字型迷路を自作し,図形の大きさまたは図形までの距離を変化させ,両図形の識別の可否から視力を判定した.左右の図形の交換は,ゲラーマン系列の乱数表に従って行った.その結果,去勢豚2頭は学習が成立せず,視力測定ができなかったが,雌豚4頭の視力値は,0.017~0.07の範囲にあった.
著者
福澤 めぐみ 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.61-68, 2010
参考文献数
8

訓練は、トレーナーから提示されたコマンドに対するイヌの反応と正しい行動で構成されている。本研究では、訓練におけるトレーナーのハンドシグナルやボディランゲージ、ならびにトレーナーとイヌとの距離がイヌの反応に与える影響について調査した。供試犬は、17から96ヵ月齢の計7頭(メス5頭、オス2頭)で、2つのコマンド("sit", "come")が女性トレーナーによって訓練された。トレーナーはイヌと向かい合った状態を維持して、イヌに対する自身の立ち位置を70cm(trial 1)から420cm(trial 6)へと段階的に変化させながら、コマンドの訓練を行なった。また、ハンドシグナル等の影響も調査するために、3つのトレーニングシリーズに分けその提示条件を変化(Training AとC,ハンドシグナルやボディランゲージあり:Training B,ハンドシグナルやボディランゲージなし)させた。各トレーニングシリーズはtrial 1から6で構成されていた。各コマンドのトレーニングセッション中におけるイヌの正しい反応率を記録し、85%の正しい反応が記録された時点でそのコマンドを学習したと判断した。1セッションでは、2つのコマンドをランダムに20回ずつ、計40回コマンドを提示した。コマンド"sit"において、各トレーニングシリーズにおける学習成立までのセッション数に有意な差(ANOVA:F[2,125]=11.02, P<0.001)が認められた。またTraining Aにおいて、Trial 1(トレーナーとイヌの距離は70cm)から2(トレーナーとイヌの距離は140cm)の移行時にエラー数が有意に増加した(W=27, P=0.02)。コマンドを提示するトレーナーとイヌの距離やハンドシグナル等の提示条件がイヌのコマンド学習に与える影響は、コマンドの特徴によって差が認められる。最初のトライアルは"sit"よりも"come"コマンドにおいて重要であることが示唆された。このことは、イヌがそのコマンドに反応した後のトレーナーとイヌの距離の違いに影響を受けているのではないかと考えられる。
著者
植竹 勝治 大塚 野奈 長田 佐知子 金田 京子 宮本 さとみ 堀井 隆行 福澤 めぐみ 江口 祐輔 太田 光明 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.192-198, 2007
参考文献数
20

動物介在活動(AAA)に飼い主と共に参加する飼い犬(Canis familiaris)のストレス反応を、尿中カテコールアミン濃度を測定することにより調べた。イヌの覚醒状態に影響すると考えられる次の2要因について検討した: 特別養護老人ホームでのAAAへの参加日数(現地調査1)および対面式での活動時における老人の座席配置(車座と並列)(現地調査2)。現地調査1では、新規参加犬8頭の活動前から活動後にかけた尿中ノルアドレナリン濃度の上昇量が、参加日数が経過するにつれて直線的に低下した(尿中ノルアドレナリン濃度の上昇量に対する参加日数(毎月1回の参加で計9日間)の回帰係数-1.213,R^2=050,P<0.05)。その一方で、活動中の各セッションにおいて、姿勢や行動を相対的に長く抑制された場合には、アドレナリン(長い抑制15.03±9.72ng/mL vs.短い抑制4.53±2.94ng/mL)とノルアドレナリン(長い抑制12.26±8.80ng/mL vs.短い抑制3.62±3.62ng/mL)の濃度上昇は、相対的に短い抑制の場合に比べていずれも有意に大きかった(共にP<0.05)。現地調査2では、尿中カテコールアミン濃度の上昇は、老人の座席配置、すなわち車座(12頭,アドレナリン10.73±9.77ng/mL;ノルアドレナリン7.13±8.01ng/mL)と並列(11頭,アドレナリン13.37±10.63ng/mL;ノルアドレナリン5.70±5.19ng/mL)間で差がみられなかった。これらの結果から、月1回の参加でも、飼い主と一緒であれば、特別養護老人ホームという新規な環境とAAAの雰囲気に、イヌは容易に順応することができ、また見知らぬ老人に囲まれたとしても、特に緊張を感じていないことが示唆された。
著者
植竹 勝治 中谷 治奈 増田 尚子 吉田 善廣 江口 祐輔 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.191-193, 2009-03-31

γ-アミノ酪酸 (GABA) の経口投与が肉用牛の長距離輸送および出荷・屠畜時のストレスを低減するかどうかを調べた。試験1では,対照区の去勢牛4頭に20mLの蒸留水を,処理区の去勢牛4頭に体重当たり10mgのGABA粉末を20mLの蒸留水に溶解した水溶液を,それぞれ130.1kmの陸路輸送直前に経口投与した。分散分析の結果,供試牛の唾液中コルチゾール濃度に対する処理と輸送経過時間との交互作用は,経過時間が60分までは有意 (P<0.05) であったが,120分以降については有意ではなくなった。試験2では,肥育牛20頭を5頭ずつ4処理区に分け,屠畜場への輸送前と翌朝の屠畜直前に,G区には13gのGABA粉末を100mLの蒸留水に溶解した水溶液を,S区には100mLの生理食塩水を,SG区には輸送前に生理食塩水と屠畜直前にGABA溶液を,それぞれ経口投与した。C区には輸送前も屠畜直前にも何も投与しなかった。多重比較検定の結果,いずれの処理区のウシの血漿コルチゾール濃度も,C区のウシよりも有意に低かった (全てP<0.01)。血漿アドレナリン濃度も,C区に比べ,S区のウシで有意に低く (P<0.05),G区のウシで低い傾向 (P<0.10) がみられた。これらの結果から,GABAの経口投与は,肉用牛の輸送および屠畜時のストレスを投与後数十分間は低減させることが確認された。We examined whether orally administered γ-aminobutyric acid (GABA) would reduce stress of applied animals such as cattle, sheep, pigs and dogs. We report here only about the results of tests of transport and handling stress in cattle. In test 1, 20 mL of GABA solution containing 10 mg of GABA powder per kg body weight was administered to a group of 4 steers. Twenty mL of deionized water was administered to another group of 4 steers. Both groups of steers were then transported together 130.1 km by road. A significant interaction between group and salivary cortisol level for transport times up to 60 min was shown in two-way repeated-measure ANOVA (P<0.05). In test 2, 100 mL of GABA solution containing 13 g of GABA powder was administered to 5 steers twice, just before transport and before slaughter (group G). One hundred mL of normal saline solution (NSS) was administered to 5 steers (group S); 100 mL of NSS and 100 mL of the GABA solution were administered to 5 steers just before transport and before slaughter, respectively (group SG). The remaining 5 steers did not receive any solutions (group C). Significantly lowered concentration of plasma cortisol in groups G, S and SG compared to group C was shown in multiple comparisons (all P<0.01). The concentration of plasma adrenaline was significantly lowered in group S (P<0.05) and tended to be lower in group G (P<0.10) compared to group C. These results indicate that orally administered GABA can be a kind of stress reliever for cattle transported and handled by human.
著者
新村 毅 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.109-123, 2009
参考文献数
128

近年、動物福祉は思想から法律への具現化を急激に始めており、世界各国で法律・ガイドラインの制定がなされている。本総説では、産卵鶏の各種飼育システムにおける福祉性および生産性について概説し、福祉については、世界的に福祉の基本概念として認められている5つの自由の観点から長短所を明瞭化した。恐怖・苦悩からの自由については、多くのシステムが変動的であるものの、飢え・乾きからの自由については、いずれの飼育システムもリスクが低いと言える。各システムの特徴については、非ケージシステム、特に放牧では、痛み・傷・病気からの自由についての評価が低く、生産性については、産卵率の低下、卵殻・卵黄の退色が見られることに加えて管理に費やす時間は増加するため、結果として経済コストは高くなる。しかしながら、その一方で、正常行動発現の自由については評価が高い。従来型ケージは、非ケージシステムと逆の特徴を有しており、生産性を含む多くの指標において高い評価が見られ、粉塵・アンモニア量が少ないため、不快感からの自由については、リスクが低い唯一のシステムと言える。ファーニッシュドケージは、従来型ケージの利点を多く残しつつも、正常行動発現の自由については従来型ケージよりも評価が高い。しかしながら、小型ファーニッシュドケージと比較して、大型ファーニッシュドケージでは、羽毛つつきなどの増加により、痛み・傷・病気からの自由および恐怖・苦悩の自由については低い評価となる。このように、完全なシステムは存在せず、いずれの飼育システムにも長短所が存在することから、それらを理解しつつ、様々な動向を考慮し、飼育システムを採用する必要があるだろう。
著者
太田 光明 塩田 邦郎 政岡 俊夫 和久井 信 田中 智夫 植竹 勝治
巻号頁・発行日
2000 (Released:2000-04-01)

地震前の動物の異常行動は、電磁波など地震前兆を感知した動物のストレス反応の一つであろうとの仮説のもとに研究を重ねてきた。しかし、ラット、ビーグル犬など「実験動物」に対して電磁波照射を繰り返しても、明確な異常行動は見られない。一方、ヒトと日常的に生活している「家庭犬」を用いたところ、6頭のうち、少なくとも2頭に顕著な異常行動を認めた。すなわち、1)マウスやラットのように「実験動物」として用いられる犬種は、ほとんどビーグル犬である。個体による違いを含め、犬の特性のいくつかを喪失しているとしても不思議はない。人による改良が進めば進むほど、電磁波異常など非日常的な物理現象を感じる必要性もなくなる。実際、本研究において電磁波の影響は見られなかった。この研究成果を遺伝子解析に応用した。2)遺伝子解析を進めるためには、プライマーが必要であり、犬遺伝子では、CRH、DRD2、DRD4など極めて少数しか判明していない。本研究では、はじめにCRH遺伝子の多型について検討した。しかし、33犬種37頭を解析した結果、遺伝子多型は検出されなかった。つまり、CRH遺伝子が「地震感知遺伝子」の可能性は低い。一方、兵庫県南部地震の直後、一般市民から集められた前兆情報のなかには、古来からの地震前兆情報であると考えられてきた夥しい数の報告が含まれていた。特に、動物の前兆的異常行動に顕著であった。また、阪神・淡路大震災の前兆情報として、犬で約20%、猫で約30%が異常行動を示したという。こうしたことから、3)本研究では、富士通株式会社ならびに株式会社NTTドコモ関西との産学協同体制でこの「動物の異常行動」の情報収集システムの構築に取組み、プロトタイプのシステムを完成させた。モニター登録者が暫時増加し、平成16年3月1日現在で、50人を数えた。
著者
田中 智夫 太田 光明 植竹 勝治 江口 祐輔 タナカ トシオ オオタ ミツアキ ウエタケ カツジ エグチ ユウスケ Toshio Tanaka Mitsuaki Ota Katsuji Uetake Yusuke Eguchi
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University
巻号頁・発行日
vol.11/12, pp.126-129, 2005 (Released:2012-09-12)

動物介在療法AATや動物介在活動AAAにに参加するイヌには,何らかのストレスが負荷されていることが知られていることから,本研究では,AAAにおける活動形態の違い及び活動経験に伴う慣れと,イヌのストレスとの関係について調査することを目的としたが,初年度はまず1つの施設において,慣れについて検討した。都内の特別養護老人ホームで活動するボランティア団体を調査対象とし,1年間にわたり毎月1回の活動時におけるイヌの行動と,活動前後の尿中カテコールアミン濃度を測定した。その結果,A及びNAの活動前後の濃度差は,活動回数を重ねるごとに直線的に有意に減少し,介在活動に参加するイヌは,活動への参加初期には少なからずストレスを感じていることがうかがわれた。また,介在活動に参加するイヌのストレスは,ヒトとの直接的な触れ合いというよりは,高齢者施設などの新奇刺激のほうが大きく影響しており,ハンドラーによる日常と異なる場面での行動・姿勢の制御も大きく関わってきていることが示唆された。2年目には,活動形態の異なる施設(高齢者が円状に位置し,その中を活動スペースとする「イヌが囲まれる」方法と,高齢者が向かい合って2列に並び,その間を活動スペースとする「イヌが囲まれない」方法)において,同様の活動を行うボランティア団体を調査対象として,原則として1年間毎月1回の調査を行った。いずれの施設においても,供試犬の尿中カテコールアミン濃度は,活動日の朝に比べて活動後に有意に上昇した。しかし,活動形態の違いによる差は認められず,高齢者の並び方といった要因は,「触れられる」,「行動を制御される」などの負荷がかけられる中では,大きな影響は認められなかった。各行動形の生起頻度や時間にも,活動形態による違いは認められなかった。なお,イヌの体格によって,ふれあい活動の内容や状況が異なることから,今後,犬種や活動内容とストレス強度との関係についても検討が必要であろう。 Stress states of dogs under an animal-assisted activity (AAA) in a nursing home were assessed by observing the dogs' behavior and urinary catecholamine concentration. In the first year, data collection was done every month in order to study the effects of habituation to AAA on the stress level changes of dogs. The results showed that even the dogs with AAA experience might feel some degree of psychological stress during AAA especially in the novel environment. Behavior of dogs was not affected by the AAA experience. In the second year, the similar program was conducted in the other three nursing homes, and the effects of contents of AAA were studied. In the two homes, the elder people sat in a circle around the dogs and their owners (C). In another home, the elder people sat in a double rank (R). Twenty-four dogs aged 2.3-7.7 years were used in total. Urine was gathered on the previous day of AAA (T1), in the morning of AAA (T2) and just after AAA (T3). Catecholamine concentrations of T1 and T2 urine were significantly different (p<0.01). Therefore, T2 urine was used as a baseline, and the difference of catecholamine concentrations between T2 and T3 urine was compared between C and R. Adrenaline (A) and noradrenaline (NA) concentrations of T3 urine were significantly higher than those of T2 urine in both C and R conditions (all : p<0.05). Dopamine concentrations of T3 and T2 urine were almost the same. These results showed that the dogs might feel some degree of psychological stress during AAA program. But the contents of AAA especially the position of elder people did not affect the stress level of the dogs.
著者
豊田 英人 江口 祐輔 古谷 益朗 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.57-65, 2012

本研究では、ハクビシン被害の対策を実施する上での基礎的知見として、捕獲ハクビシンを用いて、体型と繁殖状態について調査を実施し、それらに性差や季節性、地域差があるか否かについて検証した。調査は、埼玉県で捕獲された168頭(雄:74頭、雌:94頭)の成獣ハクビシンを対象として、体の各部位の計測値と、繁殖季節、受胎数、経産率を求めた。体サイズの測定では、冬期に捕獲した個体の体重、胸囲、腰囲が他の季節に捕獲した個体に比べ増加することが示された。繁殖季節は少なくとも1-9月と推定されたが、10-12月に関しては捕獲個体数自体が少なく、ハクビシンがこの時期に繁殖可能か否かは不明であった。受胎数は2.9±0.9で、経産率は57.4%であった。また、体型や受胎数、経産率に都市部と農村部で地域差は認められなかった。本研究の結果から、移入種といわれているハクビシンが、日本の気候に順応しており、高い繁殖能力を有し、都市部のような人の生活に密接した地域でも繁殖できる状態で生息していることが示唆された。このようなハクビシンの特性が、現在、我が国で増加しているハクビシン被害の一因となっている可能性が考えられた。
著者
田中 智夫 関野 通江 谷田 創 吉本 正
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.880-884, 1989

緬羊における色の識別能力のうち,特に類似色をどの程度まで識別できるかを明らかにすることを目的とした.供試羊は双子のコリデール種去勢羊を用い,正刺激側のスイッチを押すと飼料が与えられるスキナー箱を自作して2色の同時弁別実験を行なった.草の色を想定して緑を正刺激とし,黄および青から徐々に緑に近付けた計7色を負刺激としてそれぞれ識別させた.各課題とも1セッション30試行とし,20セッションまで行なった.各試行ごとにおける左右のカードの交換は乱数表に基づいて行なった.x2検定により1セッション21試行以上の正解(P<0.05)を基準とし,その基準に3回連続到達した時点でその色を識別したとみなした.結果は,黄から近付けた緑に最も近い色との対比において1頭が,また,青から近付けた緑に最も近い色との対比において2頭ともが,それぞれ識別不能と判断された他は,全ての組合せにおいて識別できるものと判断できた.以上から緬羊の色覚はかなり発達しているものと思われ,色による条件付け学習を利用した管理技術の開発の可能性が示唆された.
著者
田中 智夫 太田 光明
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.230-234, 2002

平成14年4月より行っている動物介在活動・療法(AAT/AAA)教育プログラムは,行動学者,人と動物の関係学の研究者,動物福祉の研究者,獣医師,心理学者,精神科医,心理療法士,ソーシャルワーカー,教育学者らが集まって,AAT/AAAに関わる人材を育てるための継続的な教育カリキュラムで,2年間で修了する。このプログラムは,Dennis C.Turner博士(institute for applied Ethology and Animal Psychology所長,スイス,本学客員教授)によって開発されたもので, 1998年に行われたプラハでのIAHAIO(international Association of Human and Animal Interaction Organi-zations)国際会議で発表され,1999年の4月に第1期生をスイスで迎え,現在はアメリカはじめ国際的に認知されている。本学では,Turner博士を含む欧米の教育・研究者6名と本学教員からなる講師陣を構成し,獣医学部ならびに獣医学研究科の研究教育カリキュラムヘの導入を図った。講義(英語)は,心理学,人と動物の関係学,人と動物に関する行動学,動物の心理学,AAT/AAAに携わる動物の適切なケア,AAT/AAAに関する倫理や危機管理,患者自身の安全管理,人獣共通感染症,動物のトレーニング方法,産業動物や野生動物を用いた作業療法など多岐にわたる。また,精神科病院や刑務所(アメリカ,カナダなど)の見学,学校への訪問など学外実習も含まれている。2年間の間に,課題レポート(英語)の提出があり,また最終試験は口答試問(英語)によってなされる。このプログラムを修了することによって得た認定書は,日本はもちろん,ヨーロッパ各国および北米でも通用するものであり,2004年3月に修了する第一期生への期待は極めて大きい。この4月より,第二期生に対するプログラムが開始された。