著者
木庭 守 山本 紀之 橋本 佳幸 三宅 秀和 増田 啓年
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.89-97, 1986
被引用文献数
3

関節内投与ステロイド剤THS-201(halopredone diacetate)の抗炎症作用活性を急性,亜急性および慢性炎症モデル動物で検討した.対照としたtriamcinolone acetonide(TA),methylprednisolone acetate(MPA),hydrocortisone acetate(HA)およびTHS-201の母化合物であるhalopredone(HP)は,急性炎症モデルであるラットのcarrageenin足浮腫,CMC pouch法による白血球遊走,亜急性炎症モデルである線球肉芽腫,carrageenin granuloma pouch法による滲出液の貯溜を,皮下・局所投与によってほぼ一定の傾向の活性比で抑制した(TA>MPA>HA=HP).THS-201は皮下投与では100 mg/kg/dayでも全く抑制作用を示さなかったが,局所投与では急性モデルでは弱い(HA>THS-201),亜急性モデルでは強い(TA≥THS-201>MPA),作用時間依存性の抗炎症作用を示した.慢性モデルのウサギの抗原惹起型関節炎では,THS-201のみが2mg/jointの関節内投与により著明な関節腫脹抑制作用を示し,有意な抑制は30日以上持続した.これらの成績および関節炎ウサギにおけるTHS-201の残存量の成績は,THS-201が組織貯溜性が高く全身循環への移行速度が極めて遅いために,対照薬が投与局所から消失し,炎症反応の開始または再燃が起った後も有効濃度が持続したことを示唆している.また,THS-201は局所および皮下のいずれの投与でも全く全身性の作用を示さなかったが,対照薬では抗炎症作用に比例した全身性の薬理作用が認められた.ステロイド剤のような活性の強い薬剤では関節内のような局所投与であっても全身性の副作用を伴うが,THS-201は投与関節の炎症のみを特異的にしかも持続的に抑制するものと考えられる.

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