- 著者
 
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             藤井 理行
             
             樋口 敬二
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 公益社団法人 日本雪氷学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 雪氷 (ISSN:03731006)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.34, no.4, pp.173-186, 1972 
 
          
          
          
          - 被引用文献数
 
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             4
             
             
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        富士山頂において, 富士山測候所付近で存在を知られていた凍土は, 山頂一帯にわたる永久凍士 (permafrost) ではないかと考え, 凍土およびその上部融解層 (活動層, activelayer) の調査を, 1970, 71年に4回にわたっておこない, 次のような結果を得た.<BR>(1) 1971年10月の調査から山頂部の凍土は, 越年する凍土すなわち永久凍土である事を確認した.永久凍土の分布は, 山頂部一帯に広がり, 下限高度は2,800~2,900mで, 高緯度永久凍土南限の年平均気温とよい一致を示す高度である.<BR>(2) 活動層厚は, 山頂部においては7月末で50~130cmで5月末の積雪水量が大きい所ほど小さい.<BR>(3) 火口稜線内部の活動層厚は, 消雪後の積算温度 (thawing index) の平方根にほぼ比例し, その比例定数である融解係数は6.44である.<BR>(4) 火山砂礫の透水性は, 凍土の方が同じ有効空隙率を有する非凍土に比べはるかに良い.10月に採取した凍土及び非凍土の透水係数 (permiability) は, それぞれ約0.62×10<SUP>-2</SUP>cm/s, 0.74×10<SUP>-2</SUP>cm/sで, 透水性は良好である.透水試験及び凍結面の観察から, 永久凍土の成長は, 水の供給という点で, 熔岩帯では制約を受けるが, 砂礫帯では制約を受けないと考えられる.<BR>(5) 積雪が最寒期に少なく, 気温が0℃を上まわる4月末から5月にかけて多いという富士山頂部での傾向は, 永久凍土の形成, 維持という点で有利な役割を果している.