- 著者
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鈴木 正己
武内 次夫
- 出版者
- 公益社団法人 日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.2, pp.179-181, 1960
- 被引用文献数
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吸光光度法によるウラン中のコバルトの定量方法として,R.W.Baneはコバルト・チオシアン酸錯塩とテトラフェニルアルソニウムクロライドとの反応生成物をクロロホルムで抽出する方法を応用し,J.M.Chiltonはコバルト,ニッケルおよび銅の三者をジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムで定量している.前者の方法は微量物の定量には感度が十分でないし,また特殊の試薬を用いるのが欠点である.後者の方法では三元素の量的関係が重要であり,またコバルトの感度がニッケルおよび銅にくらべて低いため,コバルトの量が少ないと定量が困難である.<BR>ニトロソR塩はコバルトの定量試薬としてもっとも感度のよいもので,微量コバルトの定量にしばしば用いられているが,この種の方法により金属ウラン中の微量コバルトの定量をおこなった報告がみられないので,著者らはニトロソR塩を用いる核燃料金属ウラン中の微量コバルトの定量方法を研究した.<BR>ウラン中の微量コバルトを定量する場合,多量のウラン共存のためおよびウラン中の共存不純物たとえば鉄などのため直接この試薬を利用することはうまくいかなかった.したがってウランからコバルトを有機錯化合物として適当な有機溶媒で抽出し,分離濃縮してニトロソR塩で微量コバルトの定量をおこなった.分離濃縮の手段としてジチゾン,ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどを用いる抽出が考えられるが,試薬の調製,抽出の際のpH範囲などを考慮してジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムが好適とおもわれた.したがって,この実験ではコバルトをジエチルジチオカルバミン酸錯化合物として分離したのち,抽出液中のコバルトをニトロソR錯化合物として定量する方法を検討した.その結果試料1gを使用したとき0.5ppm程度のコバルトの定量ができるようになった.