著者
能登谷 晶子 鈴木 重忠
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.140-146, 1984
被引用文献数
8 5

2歳2ヵ月から6歳7ヵ月まで聴能訓練と文字言語を並行して指導した, 聴力レベル98dBの一重度聴覚障害幼児の言語発達を検討し, 音声言語に及ぼす文字言語の効果について考察した.<BR>主な結果は以下のようであった.1) 文字言語は音声言語より習得が容易であった.2) 文字言語から音声言語への移行が認められ, 5歳0ヵ月に音声言語の発達は文字言語のそれに追いついた.3) 本例が6歳7ヵ月までに獲得した受信語彙数は, 音声・文字言語とも約4, 000語に達した.同時期の音声発信語彙数は約3, 000語であった.4) 本例の6歳代におけけ語彙, 文, 機能語の発達は同年齢の健聴児の発達レベルにほぼ相当した.<BR>以上の結果より, 先行して習得された文字言語は, 音声言語の発達を促進したと考えられ, 早期からの文字言語の導入は, 聴覚障害幼児の言語発達遅滞の改善に有効であることがわかった.

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