- 著者
-
能登谷 晶子
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.216-221, 2018-06-30 (Released:2019-07-01)
- 参考文献数
- 25
人は加齢とともに聴力閾値の上昇が高音域から生じる。内耳は加齢による影響を受け, 言葉や音楽の聞き取りに支障をきたすとされる。一方, 脳幹の聴覚伝導路は病理学的には加齢による神経の脱落は軽度にすぎないと言われている。したがって, 中枢性聴覚障害の精査では, 末梢レベルの聴こえの確認が重要である。本稿では, 広義の聴覚失認, Landau-Kleffner 症候群による純粋語聾, 皮質聾のうち自験例を中心に報告した。聴覚失認例では聴力は軽度から中度の閾値上昇で推移し, 語音・環境音では, 聴こえるが意味理解困難な状態を示した。母音聴取 50%, 子音は不可であった。純粋語聾例では, 聴力は正常から軽度の閾値上昇で推移し, 母音聴取は 100%, 子音の混乱が目立った。環境音の認知に問題なかった。 皮質聾例では, 純音聴力は無反応, 語音・環境音ともに聴取困難であった。いずれも聴性脳幹反応 (ABR) は正常範囲にあった。皮質聾例では, 患者自身の声が大声になる例とならない例に分類された。