著者
邨田 卓夫 山脇 和樹
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.723-729, 1989
被引用文献数
4

予措乾燥の効果について明らかにする目的で, 10種類のカンキツ果実を異なった湿度下で予措乾燥し, これらの果実を5°Cに貯蔵し, 予措乾燥中及び貯蔵中の果実の呼吸の変化を調べた.<br>1. 果実の目減りは, 低湿乾燥区 (64%RH) に比べて高湿区 (92%RH) は小さかったが, 同じ低湿乾燥区でもカンキツの種領によって目減りの程度が異なり, ハッサク, 川野なつだいだいでは目減りが小さく, ポンカン, イヨカン, マーコットでは大きかった.<br>2. 低湿乾燥区の果実の呼吸は高湿区に比べて予措乾燥期間を通じて下回る傾向を示した. 両区間の呼吸の差が統計的に明確なものはハッサク, 川野なつだいだい,サンボウカン, セミノール, 森田ネーブルオレンジ, 宮内イヨ, 太田ポンカンであった. これに対しマーコット, ミネオラ, 柳澄では両区間の差が有意でなかった.<br>3. 予措乾燥終了時の果実の乾燥の度合と呼吸量の間には相関関係が認められ, 一般に目減りが大きい果実ほど呼吸量が小さい傾向を示した. 果実重量の変化と呼吸量の間の相関係数 (r) は, セミノール;0.902, 川野なっだいだい; 0.819, 宮内イヨ; 0.748, ハッサク;0.555, 森田ネーブルオレンジ; 0.471, 太田ポンカン;0.430, サンボウカン; 0.420, マーコット; 0.362, であった. 柳橙とミネオラでは相関関係が認められなかった.<br>4. 5°C, 88±5% RHで本貯蔵中の果実の呼吸は太田ポンカン, 森田ネーブルオレンジ, ハッサク, 川野なつだいだい, サンボウカン, ミネオラ, 柳橙では予措乾燥効果が認められ, 低湿乾燥区の果実の呼吸は高湿区を下回った. 宮内イヨカン, マーコット, セミノールではその効果が明確でなかった.<br>以上の結果から, 中晩生カンキツの貯蔵に適当な予措乾燥が有効であると推論した.

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