著者
邨田 卓夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.17, no.10, pp.462-466, 1970
被引用文献数
3

近年陸上のおかむろを利用したバナナの追熟加工が増加する傾向にある。このおかむろによる加工法と旧来の地下むろによる加工法について検討しバナナ(Musacavendishii, cv cavendish)の品質との関係を論じた。<BR>(1)地下むろの追熟加工の条件は温度17~21℃,相対湿度82~95%,エチレンガス4,400~4,700ppmで,おかむろは14~19℃, 80~90%, 2,950~3,250ppmであった。<BR>(2) 上の条件では地下むろの果実のほうがでん粉の糖化速度が早く,出庫当日全糖含量は地下むろの13.9g/100gに対し,おかむろは12.1g/100g, 4日目にそれぞれ15.7g/100g, 13.1g/100gであった。また滴定酸度についても地下むろのバナナのほうが高いことが観察された。<BR>(3) 出庫後保蔵期間のバナナの品質について果実の外観と食味を官能検査によって評価したところ,保蔵期間を通じて外観,食味とも地下むろのバナナの方が高い評点を得た。<BR>両加工法のバナナの品質に差異が生じる原因として本研究の範囲内では冷却送風法の差異が大きく影響すると考えられ,この点おかむろによる加工法では今後検討を要することが示唆された。なお追熟加工中のむろの換気の時期はむろ内の炭酸ガス濃度をメルクマールにすれば非常に容易に判断できることがわかった。
著者
山脇 和樹 森田 典子 村上 公一 邨田 卓夫
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.636-640, 1993

収穫直後の生鮮なハーブ13種(コモンタイム,コリアンダー,フェンネル,ヒソップ,イタリアンパセリ,レモンバーム,オレガノ,ローズマリー,セージ,サラダバーネット,スペアミント,スイートバジル,スイートマジョラム)のアスコルビン酸に関する基礎調査を行って次の結果を得た.<BR>(1) 総アスコルビン酸含量は,最も多いサラダバーネットの297mg/組織100gから,最も少ないスイートバジルの67mg/100gの範囲内にあった.<BR>(2) アスコルビン酸酸化酵素は種によって活性に差がみられ,イタリアンパセリとサラダバーネットは活性が低く,他のハーブで比較的高い活性が認められた.<BR>(3) 熱湯5分間処理で,コリアンダーとレモンバームでは組織中のアスコルビン酸の約1/2が抽出液中へ溶出されるが,他のものでは約1/4以下であった.熱湯処理によるアスコルビン酸の残存率はスイートバジルで53%と最も低く,コリアンダー,フェンネル,イタリアンパセリおよびサラダバーネットでは90%以上であった.
著者
邨田 卓夫 山脇 和樹
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.723-729, 1989
被引用文献数
4

予措乾燥の効果について明らかにする目的で, 10種類のカンキツ果実を異なった湿度下で予措乾燥し, これらの果実を5°Cに貯蔵し, 予措乾燥中及び貯蔵中の果実の呼吸の変化を調べた.<br>1. 果実の目減りは, 低湿乾燥区 (64%RH) に比べて高湿区 (92%RH) は小さかったが, 同じ低湿乾燥区でもカンキツの種領によって目減りの程度が異なり, ハッサク, 川野なつだいだいでは目減りが小さく, ポンカン, イヨカン, マーコットでは大きかった.<br>2. 低湿乾燥区の果実の呼吸は高湿区に比べて予措乾燥期間を通じて下回る傾向を示した. 両区間の呼吸の差が統計的に明確なものはハッサク, 川野なつだいだい,サンボウカン, セミノール, 森田ネーブルオレンジ, 宮内イヨ, 太田ポンカンであった. これに対しマーコット, ミネオラ, 柳澄では両区間の差が有意でなかった.<br>3. 予措乾燥終了時の果実の乾燥の度合と呼吸量の間には相関関係が認められ, 一般に目減りが大きい果実ほど呼吸量が小さい傾向を示した. 果実重量の変化と呼吸量の間の相関係数 (r) は, セミノール;0.902, 川野なっだいだい; 0.819, 宮内イヨ; 0.748, ハッサク;0.555, 森田ネーブルオレンジ; 0.471, 太田ポンカン;0.430, サンボウカン; 0.420, マーコット; 0.362, であった. 柳橙とミネオラでは相関関係が認められなかった.<br>4. 5°C, 88±5% RHで本貯蔵中の果実の呼吸は太田ポンカン, 森田ネーブルオレンジ, ハッサク, 川野なつだいだい, サンボウカン, ミネオラ, 柳橙では予措乾燥効果が認められ, 低湿乾燥区の果実の呼吸は高湿区を下回った. 宮内イヨカン, マーコット, セミノールではその効果が明確でなかった.<br>以上の結果から, 中晩生カンキツの貯蔵に適当な予措乾燥が有効であると推論した.