著者
松井 鋳一郎 中村 三夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.222-232, 1988
被引用文献数
12

<i>Cattleya</i> とその近縁のラン科11属の種の花被組織における色素分布および花被表皮細胞の形状を調査し, 花被の表色との関係を考察した.<br>1. 供試した68種は, 花弁の表皮と柵状および海綿状組織におけるカロチノイドとアントシアニンの分布の違いから9群に分類できた. 黄色花は花弁にカロチノイドがあるが, <i>Cattleya</i>(C.) <i>dowiana</i> や <i>Laelia</i> (<i>L</i>.)<i>flava</i>などでは柵状&bull;海綿状組織にのみあり, <i>L. harpophylla</i>や <i>L. cinnabarina</i> などでは表皮細胞にも含まれていた.<br>赤色花には, カロチノイドおよびアントシアニン両者ともにあり, <i>Sophronitis coccinea</i> や <i>L. milleri</i> ではカロチノイドが表皮および柵状&bull;海綿状組織に, アントシアニンは表皮にのみあった. <i>L. tenebrosa</i> の褐色の花弁ではアントシニンは柵状海綿状組織にあった.赤紫色花はアントシアニンが表皮にのみあるか, 柵状海綿状組織にあるか, その両者にあるかによって3群に分けられた. <i>Cattleya</i> はこの花色の代表的な属であるが, 多くの種ではアントシアニンは柵状&bull;海綿状組織にあった. <i>C. intermedia</i> var. <i>aquinii</i> や <i>C. leopoldii</i>の花弁着色部分やスポットには表皮細胞にもあった.<i>Laelia</i> の濃紫赤色花は表皮および柵状&bull;海線状組織ともにアントシアニンを含み, 淡紫赤色のものでは表皮にはなかった.<br>2. 供試した種は Hunter 表色法によって3群に分けられた. 花弁にカロチノイドのみを含む, 黄色ないし橙色花は色相(b/a)が0.47以上に, カロチノイドとアントシアニンが共にある赤色花は0.47_??_b/a>-0.13に,アントシアニンのみを含むいわゆるカトレア色の紫赤色花は-0.13_??_b/a>-1.0にあった.<br>カロチノイドを含む花弁では, カロチノイドが多いと明度が高くなった. アントシアニンのみを含む花弁や唇弁では, アントシアニンが多いと明度が低くなった.<br>3. 花弁と唇弁の上面表皮細胞は種によって大きさおよび形に変異がみられた. 属を同じくする種ごとにみると変異は連続的であり, 小さいものは四角で, 光沢のある花にみられ, 大きいものはビロード状を示す花にみられて長三角形であった. 表皮細胞の大型化と四角形から長三角形への変化は進化の方向を示すものと思われ,<i>C. labiata, L. purpurata</i> や <i>Brassavola digbyana</i> などのように鑑賞価値が高く, 花径の大きな花の表皮細胞は, それぞれの属内では最大で長三角形であった.

言及状況

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&lt;i&gt;Cattleya&lt;/i&gt; およびその近縁属における花被組織の色素分布:I. 原種 https://t.co/kRvWJBdnMV

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