著者
金 国光 内藤 俊栄 松井 鋳一郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.496-502, 2004-09-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

来歴や親子関係の不明な品種・系統を含むCaleya walkeriana、C.nobilior、C.loddigesiiおよびそれらの交配種、計25品種・系統について類縁関係および花色の異なる品種間の識別マーカーを明らかにするためRAPD分析を行った。8種の12および10塩基プライマーにより176本の多型バンドが100-2000bp範囲で検出された。その中で65本のRAPDマーカーを用いてクラスター分析を行った結果、C.walkeriana(2交配種を含む)、C.nobiliorおよびC.loddigesiiは3つの大きなクラスターに分離し、C.nobiliorをC.walkerianaと形態的、生態的に別種とするBriegerら(1981)の分類を支持する結果が得られた。これまでC.nobiliorあるいはC.loddigesiiとの交配種と考えられていたC.walkeriana var.alba 'Pendenive'はC.walkerianaアルバ品種と同一のクラスターに分類された。さらに、異なる花色を持つC.walkeriana品種はプライマー1種を用いたRAPD分析で識別された。
著者
松井 鋳一郎
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.393-402, 1988-12-25

Cattleyaおよび近縁属の交配種約210について原種と同様に花色素の花被内分布,花披色および表皮細胞の形状について調査し,原種との相関について検討した。1 花被内のカロチノイドとアントシアニンの分布様式は原種より多く,12のパターンに分類した。ラベンダー系のCattleya, Brassocattleya, BrassolaeliocattleyaやLaeliocattleyaは親と同じ分布様式P_2を示したが,C. intermedia var. aquiniiやC. trianaeとL. pumilaの子孫で表皮にアントシアニンを含む(P3)交配種があった。また,Sophronitisの子孫でもカロチノイドを欠く"ソフロレッド"のものはP3であった。赤色花はカロチノイドとアントシアニンを共に含んでいた。アントシアニン色素を表皮に含むSophronitisの子孫が多かった。しかし,表皮にアントシアニンを含まない赤色のSophronitisの子孫も少数あった。2 Brassavolaの子孫は黄緑,白,ラベンダー色と色度図上原点を通って分布し、赤色の交配種はなかった。色度図上から,ラベンダー系の交配種より,楔花,楔花より"ソフロレッド"の花の方がより赤味が強かった。S. coccineaはLaeliaと交配したとき,その親となる種によって広く分布した。3 交配種の表皮細胞の形や大きさは両親の性質を強く受けた(回帰係数で,形,0.32〜0.56,花弁・高さ,0.40〜0.50,唇弁・高さ,0.37〜49)。また,種や種を構成するグループによって影響の表われ方は異なった。 C. aurantiacaは交配相手の影響が出やすく,C. labiataグループはグループの形質の影響が強く出た。
著者
松井 鋳一郎 中村 三夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.222-232, 1988
被引用文献数
12

<i>Cattleya</i> とその近縁のラン科11属の種の花被組織における色素分布および花被表皮細胞の形状を調査し, 花被の表色との関係を考察した.<br>1. 供試した68種は, 花弁の表皮と柵状および海綿状組織におけるカロチノイドとアントシアニンの分布の違いから9群に分類できた. 黄色花は花弁にカロチノイドがあるが, <i>Cattleya</i>(C.) <i>dowiana</i> や <i>Laelia</i> (<i>L</i>.)<i>flava</i>などでは柵状&bull;海綿状組織にのみあり, <i>L. harpophylla</i>や <i>L. cinnabarina</i> などでは表皮細胞にも含まれていた.<br>赤色花には, カロチノイドおよびアントシアニン両者ともにあり, <i>Sophronitis coccinea</i> や <i>L. milleri</i> ではカロチノイドが表皮および柵状&bull;海綿状組織に, アントシアニンは表皮にのみあった. <i>L. tenebrosa</i> の褐色の花弁ではアントシニンは柵状海綿状組織にあった.赤紫色花はアントシアニンが表皮にのみあるか, 柵状海綿状組織にあるか, その両者にあるかによって3群に分けられた. <i>Cattleya</i> はこの花色の代表的な属であるが, 多くの種ではアントシアニンは柵状&bull;海綿状組織にあった. <i>C. intermedia</i> var. <i>aquinii</i> や <i>C. leopoldii</i>の花弁着色部分やスポットには表皮細胞にもあった.<i>Laelia</i> の濃紫赤色花は表皮および柵状&bull;海線状組織ともにアントシアニンを含み, 淡紫赤色のものでは表皮にはなかった.<br>2. 供試した種は Hunter 表色法によって3群に分けられた. 花弁にカロチノイドのみを含む, 黄色ないし橙色花は色相(b/a)が0.47以上に, カロチノイドとアントシアニンが共にある赤色花は0.47_??_b/a>-0.13に,アントシアニンのみを含むいわゆるカトレア色の紫赤色花は-0.13_??_b/a>-1.0にあった.<br>カロチノイドを含む花弁では, カロチノイドが多いと明度が高くなった. アントシアニンのみを含む花弁や唇弁では, アントシアニンが多いと明度が低くなった.<br>3. 花弁と唇弁の上面表皮細胞は種によって大きさおよび形に変異がみられた. 属を同じくする種ごとにみると変異は連続的であり, 小さいものは四角で, 光沢のある花にみられ, 大きいものはビロード状を示す花にみられて長三角形であった. 表皮細胞の大型化と四角形から長三角形への変化は進化の方向を示すものと思われ,<i>C. labiata, L. purpurata</i> や <i>Brassavola digbyana</i> などのように鑑賞価値が高く, 花径の大きな花の表皮細胞は, それぞれの属内では最大で長三角形であった.
著者
イスラム オバイドル M. 松井 鋳一郎 市橋 正一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1132-1138, 1999-11-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
11 18

光質がCattleyaの発芽と発育に及ぼす影響を明らかにするため, C. walkeriana種子を京都培地に無菌播種し, 異なる光質条件で16時間日長, 室温25℃で培養した.その結果, 播種70日後の発芽率は赤, 黄および青色光下で高かったが, 緑色光では低かった.その後, 植え替えて同様に異なる光質で培養を続けたところ, シュートと根の発育は赤, 黄色光ですぐれた.青色光では実生の新鮮重とシュートの発育は増大したが乾燥重は小さかった.緑色光ではシュート長が大となり, 葉数は増加し, シュートと葉軸からの根の発育は促進された.一方, 新鮮重や乾物重, 葉の長さ, 葉の幅や根の伸長は他の区より劣った.TTC反応で見た根のデヒドロゲナーゼ活性は青色光で最も高く, 赤色光で最も劣った.
著者
松井 鋳一郎 禿 泰雄
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.49-55, 1994-12-28
被引用文献数
3

Dendrobiumのピンク品種,Den. xChristmas Chime 'Asuka' と黄色品種,Den. xYellow Ribbon 'Delight'の花弁の形質と花色に及ぼす気温と光およびアブシジン酸の影響を調査した。両品種とも低温(昼夜温,18-15℃)で中温(25-20℃)や高温(32-25℃)より開花が遅れた。ピンク品種は中温で長い花弁となったが黄色品種は高温でその発達がよかった。ピンク品種の花弁先や唇弁目玉でのアントシアニンの生成は低温で多かったが黄色品種花弁では高温で著しく多かった。カロチノイドはピンク品種の唇弁では低温で多く,黄色品種の唇弁周辺部や花弁では高温で少く,唇弁は多かった。光のある条件で咲いたピンク花は幅の狭い花弁と広い唇弁となり,唇弁先の紅は大きくなった。黄色の品種にはほとんど影響がなかった。花弁のアントシアニン生成は両品種とも光のある条件で暗黒条件より優れていた。カロチノイドの生成は光条件でピンク品種の唇弁は著しく多かったが,黄色の品種では影響がなかった。蕾へのアブシジン酸の処理は唇弁の生重が高ったことアントシアニンの生成に阻害的であったことを除くと他の形質には影響がなかった。
著者
李 進才 趙 習コウ 松井 鋳一郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.372-379, 2001-05-15
被引用文献数
7 5

遮光率60%の温室で育てたSlc. Estella JewelとCym. Sazanamiを10月21日に直射日光(最大日射0.61kW・m^<-2>)にさらし, また, 両植物種を5月から10月まで遮光率30%(強光区), 60%(対照区)および90%(弱光区)で栽培し, 葉中の抗酸化酵素活性と色素含量の変化について調べた.1. CAM植物のCattleyaの抗酸化酵素活性はC_3植物のCymbidiumに比べて著しく低く, 前者は昼間, 後者は夜の始まりで高まる傾向がみられた.直射光処理により, CattleyaのSOD活性は著しく低下したが, APX活性はわずかに, CAT活性は著しく増加した.これに対して, CymbidiumのSODとCAT活性は顕著に, APX活性はわずかに減少した.2. 強光下の栽培1か月後, CattleyaのSODとCAT活性は著しく低下し, その後実験終了時まで対照区より低かったが, CATは活性が回復する傾向を示した.CymbidiumではSODとAPX活性は3か月まで低下を続け, CAT活性は実験終了時でも低かった.一方, 弱光下ではCattleyaのSODを除き, 両植物種の3酵素活性は対照区の植物に比べ遮光栽培中高い活性を維持した.3. 葉中のクロロフィル含量は両植物種ともに遮光率が低い区ほど少なく, さらにこれら3酵素活性と高い相関関係を示した.強光区のCattleyaではクロロフィルa/b比とβ-カロテン含量が遮光栽培1か月後著しく低下したが, 3か月後対照区と同等に回復した.Cymbidiumでは強光によるそれらの低下は少なかった.弱光栽培1か月後, クロロフィルとβ-カロテン含量の増加はCymbidiumでは著しく, Cattleyaでは少なかった.その後はいずれも対照区との差が縮まった.以上の結果から, CattleyaはCymbidiumより強光への積極的適応性を有するが, 両植物種とも強光への順化が一般に困難で, 弱光への順化は相対的に容易であると考えられる.