著者
加藤 公道
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.278-289, 1984
被引用文献数
1 11

カキ果実をいろいろな条件下でアルコール処理して果実内のエタノール含量を変え (0.00~1.40%), それらの脱渋性及び追熟中の果実成分の変化, 炭酸ガス及びエチレン排出量の変化などを調査した.<br>1. 果実内のエタノール含量が多くなるにつれて, タンニン含量の減少が始まる時期が早くなるとともに減少速度も速くなった.ただし, タンニン含量の減少が始まるまでには一定の期間が必要であり, 20&deg;Cでは約2日であった. エタノール含量の影響は, およそ0.2%ないし0.3%以下で顕著に現れた.<br>2. 果実内のエタノール含量が多いほど, アセトアルデヒド含量も多くなった.<br>3. アルコール脱渋処理により果実のエチレン排出量が増加し, そのピーク値はエタノールガス濃度が濃いほど高かった. 20&deg;Cではエチレン排出量は処理を開始して約1日後にピーク値に達し, これに伴って炭酸ガス排出量の増加が起こり, さらに, 硬度低下及び果皮のクロロフィル含量の減少が促進される傾向が認められた.<br>4. 果肉硬度の低下速度は, 果実内のエタノール含量が0.1~0.2%以下のアルコール処理果と無処理果との間では相違がほとんど認められなかった.<br>5. 果皮のカロチノイド含量は, エタノール含量が0.03~0.20%のアルコール処理果と無処理果との間では相違がほとんどないか, または, 処理果の方がやや緩やかに増加する傾向が認められた.<br>6. 汚損果の発生はエタノール含量が約0.1%以下では少なく, エタノール含量が約0.1%以上で過湿条件, あるいは約0.3%以上でやや多かった. アルコール脱渋処理時の温度では, 低温の方が汚損果の発生が多かった.<br>7. アルコール処理による脱渋時の果実内のエタノール含量は, 脱渋性及びその後の果実の品質からみて, 10~20&deg;Cでは0.1~0.2%, 30&deg;Cでは0.2%前後が適当と判断された.

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