著者
加藤 公道 佐藤 良二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.89-97, 1975 (Released:2007-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

白肉桃 (大久保および白鳳) を10°C, 15°C, 20°C, 25°C, 30°Cの各温度で追熟し, 呼吸量, エチレン排出量, 硬度, はく皮性, 糖分, 食味などを調査して, モモの追熟生理を検討した.1. 大久保の20°Cでは, 25°Cよりエチレン排出量が速く増加してピークも高く, 呼吸量もピークに早く達し, はく皮も早く可能になつたが, 軟化は25°Cもほぼ同様に進んだ. 20°C, 25°Cでは, 呼吸のピークの2~3日後にエチレン排出量がピークに達し, その後急速に減少した. 呼吸のピーク時の熟度は20°Cが適熟, 25°Cは過熟であつた.2. 白鳳では1日後のエチレン排出量が大久保より多く, 軟化は速く進んだ. 25°Cでは, 20°Cより呼吸量が早くピークに達し, 軟化も速く進んだが, エチレン排出量は20°Cもほぼ同様に増加した.3. 10°C, 15°Cでは, 呼吸量, エチレン排出量がゆるやかに増加し, 軟化は穏やかに進み, はく皮性の進行もかなり遅れた. 大久保の10°C, 15°Cではエチレン排出量, 軟化, はく皮性が25°Cとほぼ同じ状態まで達したが, 10°Cではフレーバーが劣つた. 大久保の15°Cでは, 呼吸のピーク時からエチレン排出量が減少するまでの期間が, 25°Cと異なり長かつた. 適熟に達するまでの追熟期間は, 25°Cと比べて, 10°Cでは約3倍, 15°Cは約2倍であつた.4. 30°Cではエチレン排出量が抑制されて, 減少する傾向が認められた. 呼吸量の増加はほとんど認められなかつたが, 軟化は白鳳では25°Cと同様に速く, 大久保では2~3日後まで25°Cよりやや遅れたが, その後は速く進んだ.5. 30°Cでは還元糖は漸増した. 水溶性ペクチン含量は軟化の進行とともに増加し, 硬度と密接に関連した.6. 以上の結果から, 追熟温度は果肉の色, エチレン排出量, 軟化の速さなどに影響を及ぼし, エチレンは呼吸の climacteric, 軟化, はく皮性の進行などを促進した. 呼吸量, エチレン排出量, 軟化, はく皮性などは追熟中相互に関連しながら進んだが, これらの相互関係は品種, 追熟温度により影響を受けることが認められた.
著者
加藤 公道
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.278-289, 1984
被引用文献数
1 11

カキ果実をいろいろな条件下でアルコール処理して果実内のエタノール含量を変え (0.00~1.40%), それらの脱渋性及び追熟中の果実成分の変化, 炭酸ガス及びエチレン排出量の変化などを調査した.<br>1. 果実内のエタノール含量が多くなるにつれて, タンニン含量の減少が始まる時期が早くなるとともに減少速度も速くなった.ただし, タンニン含量の減少が始まるまでには一定の期間が必要であり, 20&deg;Cでは約2日であった. エタノール含量の影響は, およそ0.2%ないし0.3%以下で顕著に現れた.<br>2. 果実内のエタノール含量が多いほど, アセトアルデヒド含量も多くなった.<br>3. アルコール脱渋処理により果実のエチレン排出量が増加し, そのピーク値はエタノールガス濃度が濃いほど高かった. 20&deg;Cではエチレン排出量は処理を開始して約1日後にピーク値に達し, これに伴って炭酸ガス排出量の増加が起こり, さらに, 硬度低下及び果皮のクロロフィル含量の減少が促進される傾向が認められた.<br>4. 果肉硬度の低下速度は, 果実内のエタノール含量が0.1~0.2%以下のアルコール処理果と無処理果との間では相違がほとんど認められなかった.<br>5. 果皮のカロチノイド含量は, エタノール含量が0.03~0.20%のアルコール処理果と無処理果との間では相違がほとんどないか, または, 処理果の方がやや緩やかに増加する傾向が認められた.<br>6. 汚損果の発生はエタノール含量が約0.1%以下では少なく, エタノール含量が約0.1%以上で過湿条件, あるいは約0.3%以上でやや多かった. アルコール脱渋処理時の温度では, 低温の方が汚損果の発生が多かった.<br>7. アルコール処理による脱渋時の果実内のエタノール含量は, 脱渋性及びその後の果実の品質からみて, 10~20&deg;Cでは0.1~0.2%, 30&deg;Cでは0.2%前後が適当と判断された.