著者
新居 直祐
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.160-170, 1980
被引用文献数
2 11

カキ果実 (品種富有) の肥大生長を解析するために, 果径と果実重の生長速度及び相対生長率の季節的変化並びに果柄部維管束の発達過程について調査を行った.<br>生長速度からみて, カキ果実の肥大生長は2重のS字曲線を描いた. 第1期生長期 (開花期~8月上旬) では果径肥大の生長速度の上昇とピークに達する時期が, 果実重より数週間早く, また生体重増加の生長速度が乾物重増加のそれより約1週間早かった. 第1期の果径生長期には, 果実の水分含有率が高まり, 7月中&bull;下旬の果実生体重の増加期には乾物率の低い期間が続いた. なお, 開花直後の2週間は乾物率の高い期間があったが, これはこの時期, 果肉中に占めるタンニン細胞の密度が高いことと関連していた.<br>第2期の生長停滞期には, 果実は乾物率が高まった. また種子重並びに種子の乾物率は, 顕著に増大した.<br>第3期生長期では, 果実は急速に肥大して果実重が増大するとともに, 乾物率も増加を続けた.<br>果径肥大の生長速度は第1期が第3期より高く, 生体重については第1期と第3期でよく類似し, 乾物重では第3期で顕著に高かった.<br>6月から7月の果実発育の初期には, 種子と果実重との間に高い正の相関関係がみられたが, 1果実中に含まれている種子数別にみた果実の肥大曲線には著しい相違はみられなかった.<br>果径と果実重の開花後の相対生長率 (RGR) のピークは開花後数日間にみられ, その後しだいに低下し, 第3期にわずかに高まった.<br>果柄径の肥大は第1期で著しく, 8月中旬まで肥大が続き, その後はほぼ一定となった. 果柄部横断面の維管束の発達状況をみると, 開花約1か月前にすでに維管束の分化がみられたが, 道管, 師管の発達程度はまだ小さかった. その後開花期にかけて道管数, 道管径並びに師管, 随伴細胞の分化, 発達も著しくなり, これらの生長は開花4週目ごろまで顕著であった. 果実生長の第2期には維管束の発達も停滞する傾向がみられたが, 果実生長の第3期になるころより再び木部, 師部の発達がみられるようになり, 果実の肥大生長とよく対応していた.

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